関東支部の活動

現場技術

第100回現場鋳造技術研究会を開催

現場鋳造技術研究会31年の足跡を振返る

本渕 祥三
中江会長の講演

中江会長の講演

 平成15年11月21日(金)第100回現場鋳造技術研究会が日立金属高輪和彊館において開催された。 多くの参加者の中、研究会は小松部会長の開会の言葉に始まり、3件の事例発表、石原支部長による総評及び感謝状贈呈、 そして特別記念講演「現場鋳造技術研究会、31年の足跡を振返る」(著者)、「球状黒鉛鋳鉄鋳物の不良対策、その基礎から応用まで」(中江会長) が行われ、第100回記念懇親会へと続き盛会のうちに和やかに閉会した。
 第1回現場鋳造技術研究会は昭和47年10月20日13時30分から早稲田大学鋳物研究所(当時:現在の各務記念材料技術研究所)において、 初代支部長 加山延太郎先生(故人)の挨拶で開催された。 そして平成15年11月21日の第100回まで31年を経過した。 ここで紙面を借りて31年間に行われた100回の現場鋳造技術研究会の足跡を振返ってみる。

1. 現場鋳造技術研究会発足の経緯

日本鋳物協会関東支部の発足
 関東支部の発足は昭和46年5月11日、機械振興会館に於いて設立総会が行われ発足した。支部設立に当たっては大変な苦労があった様である。その当時既に関東以外にて7支部が全国で活動しており、本部のある関東にだけは支部がなく、全国講演大会の開催等に支障をきたしていた。当時の第11代会長の鹿島教授(早大)が支部設立の必要性を説かれ、加山教授(早大)が設立の準備に奔走された。当時は鋳造関係の団体は6~7団体あり、新しい支部の設立が受け入れられる雰囲気はなく、相当苦労をされたようである。
 関東支部の設立に当たり、若い技術者・技能者の技術交流の場を設け、勉強・研鑽等をしてもらい職場に戻って鋳造現場を活性化させる核になってもらうような支部の活動に重点を置きたい旨、熱く語られ説得をされ支部設立へとこぎつけられた。

現場鋳造技術研究会の発足
 加山初代支部長の御指示により、当時総合鋳物センターの阿部氏(故人)、金材研の菊地氏(故人)、池貝鉄工の中野氏、日野自動車の芦沢氏等により、現場鋳造技術研究会の発足の準備が進められた。
 当時は鋳造技術熟練者の高齢化も進み、中卒若年作業員の採用も困難で、次第に高卒の技能者が増大、丁度現場を支える作業者層の転換期でもあって、こうした人達の「技術レベルの向上」と「固有技術の啓発活動」のため。現場鋳造技術研究会を発足させ、研究会で発表された資料を教育資料とし啓発活動を展開するという構想が立てられた。
 具体的には、高卒の現場技術者を中心にして固有技術(特に鋳造方案)を主体として鋳造欠陥をケーススタディのテーマとして取り上げ相互研修会の場としていき、なるべく事例発表会にならないよう、問題を提起する様な方向で進めたい。そのため、当初は4社でスタートし、支部理事がコーディネーターとなり質問・意見・体験談が出るように誘導すると共に、自分自身の技術体験を踏まえて問題点の在り方、技術方針等の意見を発言し参考に供する。こうした発表・質疑応答・発言の内容を記事録に収録し印刷物として配布する。現場の人達はなかなか学会誌を読まないし、なじめないと云うこともあり、だんだんと売れる「ジャーナル」に育て、現場の人達が積極的に参加し「俺も出てしゃべりたい」と思う印刷物を目指そうとスタートされた。
 かくして、第一回研究会は昭和47年10月20日、早稲田大学鋳物研究所の講義室で、池貝鉄工・石川島播磨重工・小松製作所・相模鋳造の4社・8名と理事4名の12名で開催された。

2. 活動の経緯・活動状況
不良対策
原価改善
新工法 新技術 実験

活動の実績
 第1回~第100回迄の発表件数は314件、特別講演20件、工場見学10件である。発表会社は26社にも及んでいる。 当初4社でスタートしたこの研究会も現在は参加会社も20社になり、 年3回、1回3~4件の発表と年1回の工場見学会を交え活発な活動が展開されている。

発表の内容
 第1回~第100回迄の発表内容を大きく層別して見ると、不良対策に関するもの185件、原価改善に関するもの74件、 新工法・新技術・実験検証に関するもの54件となっている。更に各項目の内容について調べて見ると別表の通りである。

事例集の発刊
 当初は発表会開催ごとに質疑応答・出席者の意見・コメント等を記録し事例集にして次回開催の研究会で配布する様にしていた。 第40回以降は第1回分よりも含めて合本として2~3年に1回発刊している。 これは本来この研究会がクローズド方式で運営されて来た関係で、せっかくの成果も公表されないままに推移して来たが、 まとまった成果は公表して一般の会員の方々のお役に立てるのが望ましいと云うことで、 メンバー会社に資料の公表のお許しを得て発刊することになり、 昭和54年5月第1集の発刊以来、平成14年3月の第9集まで発刊されている。

まとめ

 当研究会も関東支部の発足で支部の中枢的活動行事として加山先生を初め中野氏、芦沢氏、永瀬氏等の諸先輩の御尽力により発足し、 歴代支部長はじめ担当理事のご協力で31年を経過し、歴史と伝統を有する研究会になった。
 平成元年には本部でも当研究会をモデルに各支部持ち回りで全国大会が開催されるようになり、 更には学会誌にも現場技術改善事例として掲載されることとなった。
昨今でこそ我が国の将来に向けて「物作り」の重要性が認識され盛んに論じられているが、 当支部ではこの研究会で既にこの先取りをして活動を展開して来たと云っても過言では無い。
 発表内容も近年は多岐に渡り「カッコ良い」発表が目立つ面もあるが、この研究会の発足当時の思想を忘れることなく 「問題の提起をし」「大いに議論をし」「相互研鑽の場」として更なる継続・発展を願っている。