関東支部の活動

研究

日本鋳造工学会 関東支部研究部会 第72回講演会 報告

更なる高機能・高性能に向けてのアプローチ

 去る12月9日(金)、『更なる高機能・高性能に向けてのアプローチ』をテーマに、第72回関東支部講演会が渋谷区恵比寿のエビス303ビルにて開催されました。
 「アルミニウム鋳造合金の熱疲労特性と高性能ディーゼルエンジンへの展開/いすゞ自動車(株):茂泉 健氏」と「鋳造シミュレーションの予測精度を良くするための物理モデル、メッシュ作成、物性値についての検討/(株)イーケーケージャパン:久保公雄氏」の2つの講演は、ともにタイムリーな内容で、講演後は聴講者(40余名)との質疑応答で時間大超過の盛況な講演会となりました。

アルミニウム鋳造合金の熱疲労特性と高性能ディーゼルエンジンへの展開
いすゞ自動車(株): 茂泉 健 氏

茂泉 健 氏 茂泉氏は、無公害(NOx)、低燃費の次世代高性能ディーゼルエンジンに対応できるアルミ合金シリンダヘッドの開発について講演された。このエンジンは、ガソリンエンジンと比べより過酷な環境下(高温、高圧)で使用される。したがって、より熱疲労特性に優れたアルミ鋳造合金の開発が不可欠になる。具体的にはAC4C合金に銅・マグネシウムをある範囲で添加した試料を作り、それぞれの時効硬化挙動とナノ金属組織を詳細に解析し、次世代エンジンに最適なアルミ合金開発迄のアプローチとその成果を説明された。日本は温暖化などの観点からCO2ガス規制でガソリンエンジンが主流だったが、石油が高騰したこれからは燃費が良く低公害のディーゼルエンジンが主流になるだろう。内容ある研究成果で、氏の今後の活躍に期待したい。

 

鋳造シミュレーションの予測精度を良くするための物理モデル、メッシュ作成、物性値についての検討
(株)イーケーケージャパン: 久保 公雄 氏

久保 公雄 氏 久保氏は、「直交メッシュ法を用いたモデルでのシミュレーション結果が多く報告されているが、なかなか実状に合わないことが分かってきた。鋳造品が、益々薄肉・複雑形状化していく今日、メッシュ切りの違いにより結果に大きな差が出る。これからは、メッシュ切りに時間がかかり大変であるが有限要素法メッシュで作ったモデルでの解析が大切である。」と述べられた。 今回は、有限要素法メッシュでメッシュ切りしたモデルでのシミュレーション結果を多くの実験結果や実例の解析と対応付けて詳しく説明された。今や「湯流れ時のガスや介在物の巻き込み」、「鋳物の凝固過程における鋳物-鋳型間の熱伝達率変化」、「ポロシティ欠陥予測から実体強度の予測」など、数年前では考慮することが不可能であった要因を解析に盛り込むことが必要不可欠になってきている。この方法を用いることにより、これらの要因も取り込んだシミュレーションが可能、その結果も説明された。 コンピュータ上で、 現場での現象がここまで再現されていることを実感できる講演でした。
  また、これまで長時間かかった本メッシュ切りも久保氏開発のソフトで大幅な時間短縮できるとのこと。今後の鋳造シミュレーション技術の発展に注目したい。

<記 Y&K>