関東支部の活動
第20回加山記念講演会
半凝固加工技術の進展 ー 発展途上国から眺めて ー
平成20年4月18日、日立金属「高輪和彊館」にて第20回加山記念講演会が開催され、半凝固加工技術について梅田先生の貴重なご講演を傾聴することが出来ました。
先生は昭和44年に東京大学の教官に就かれ、昭和60年に教授、平成13年(2000年)に退官、その後(同年4月より)タイのチュラロンコン大学客員教授として招かれ,学会の設立やアジア諸国における鋳造技術の向上に今も貢献されています。先生の業績は、連続鋳造の凝固過程の解析,凝固組織の形成と偏析の生成機構,デンドライト成長についての詳細な研究、加えて凝固温度域の金属材料の強度・延性挙動をミクロ偏析と関連づけた多くの研究データから内部割れに対する基礎を確立、また鋳物の変形に及ぼす各種要因を検討し、その予測シミュレーション技法を提案されなど多岐に亘っております。これらの成果により、鉄鋼協会から俵論文賞(S50),西山記念賞(S54)を、日本鋳物協会(現:日本鋳造工学会)より論文賞(S60),優れた研究論文に与えられる小林賞を4回受賞そして飯高賞と功績賞(H5)を、日本金属学会より論文賞(S60,H3)を受賞されています。
今回は、鉄鋼材料の連続鋳造、アルミニウム合金の半連続鋳造における凝固割れ(内部割れ)の予測や支配因子を明らかにするため、合金の半凝固状態での力学特性を得る方法・装置を開発、さらに鉄鋼材料、展伸用を中心としたアルミニウム合金の半凝固状態の力学特性を系統的に取得された結果についてお話しを頂きました。鉄鋼材料の連続鋳造では、偏晶組成前後の凝固割れ感受性が高いことが知られているが、高温の力学特性の取得技術やデータの充実、計算技術の発達によって、今日ではかなりの製造プロセスで凝固割れが抑えられるようになっている。
アルミニウム合金の半連続鋳造においても、力学特性の充実によって凝固割れやバットカールの予測などが進歩していること、ダイカスト分野においては、アルミニウム合金ダイカスト材の生産量が押出材に匹敵するまでに成長しており、近年では、特殊ダイカスト工法として、宇部興産のNRCや日立金属の半凝固スクイズキャスト、さらにはナノキャスト法が考案され、そのポテンシャルの高さが注目されているなどお話をされました。さらに中国を中心とした鋳造技術の発展、特に半連続鋳造の研究のめざましい発展について言及され、高力アルミニウム合金の鋳造においては半凝固状態をうまく利用することで、内部割れ等の欠陥を抑制する画期的な鋳造法についても検討が進んでいる旨を紹介されました。
<早稲田大学 吉田 誠>