関東支部の活動

研究

日本鋳造工学会関東支部、都立産業技術研究センター合同セミナー

「ダイカストの欠陥・不良対策の勘どころ」の報告

合同セミナー風景 去る平成21年11月19日(木)、都立産業技術研究センターにて「ダイカストの欠陥・不良対策の勘どころ」と題してセミナーが開催されました。本セミナーは、東京都の学協会連携事業の一環として、東京都立産業技術研究センターと日本鋳造工学会関東支部との連携による初めての試みでありました。 時節柄、参加人数が心配されましたが、鋳造工学会の会員及び一般含めて112名の方々にご参加いただき大変盛況に開催できました。また、講演会終了後の懇親会では約30名の方々と懇親を深めることができました。
開催に先立って、佐藤健二氏(鋳造工学会関東支部長)から開会の辞と片岡正俊理事長(都立産業技術研究センター)から挨拶があり,産学官連携基盤産業の維持・発展への施策について紹介されました。講演会は、ダイカスト業界の抱える「欠陥と不良」をいかに早期解決できるかにスポットを当て、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金と様々な切り口で発表された7件のタイトル、発表者、概要を以下に紹介します。

1.「アルミニウム合金ダイカストの鋳造欠陥・不良の種類と発生原因」
(社)日本ダイカスト協会 西 直美 氏
合同セミナー風景

0.1s程度の短時間に充填を完了するダイカストには、鋳巣欠陥や湯流れ欠陥など多くの鋳造欠陥を発生し、不良の原因となります。鋳造欠陥・不良対策は、問題となる鋳造欠陥の種類を特定し、発生原因を把握して原理・原則に基づいた的確な手段を選定しなければなりません。アルミニウム合金ダイカストの鋳巣欠陥を例に、分類と特定方法及びその発生原因について紹介されました。

2.「亜鉛合金及びマグネシウム合金ダイカストの欠陥・不良の種類とその発生要因」
(独)都立産業技術研究センター 佐藤健二 氏

湯流れが良く寸法精度も高いZn合金やMg合金は、薄肉や複雑形状部品に適用されています。ここでは、市場で使用頻度の高いZDC2 (Zn合金)とAZ91D (Mg合金)ダイカスト品で発生する欠陥の種類とその要因を特定する組織解析事例とその対策への考え方について紹介されました。

 

3.「アルミダイカスト(シリンダーブロック)の鋳造欠陥と原因及び対策内容について」
日産自動車㈱ 増井 寛 氏

グローバル展開しているアルミニウム合金ダイカスト製シリンダーブロックの鋳造欠陥と原因及び品質対策、水平展開方法について紹介されました。併せて同社で取り組んでいる品質保証体制に関しても紹介していただき、大変参考になりました。

 

4.「大型フライホイールハウジングの金型変形防止」
日立金属㈱ 金内良夫 氏

2,000tダイカストマシンを越える規模のダイカストでは、金型の変形が大きな生産性阻害要因になることがあります。同社がダイカストしている大型フライホイールハウジングを例に金型変形の対策事例について紹介していただきました。

 

5.「ダイカスト部品の変形原因とその対策」
筑波ダイカスト工業㈱ 佐藤邦洋 氏

薄肉部と厚肉部が混在するような複雑形状のダイカストでは、鋳造からトリミングに至る様々な工程で製品の変形を発生させる要因があります。本報告では、量産しているアルミニウム合金ダイカストを例に工程毎での変形メカニズムを考察し、その発生要因を特定し、どのような対策をおこなっているかにについて紹介していただきました。

 

6.「超薄肉亜鉛ダイカストの湯流れ欠陥と変形対策」
㈱プログレス 西山義雄 氏

亜鉛合金ダイカストは、機械的特性、表面処理性に優れるものの比重が大きいため、軽量化には適さず、年々使用量が減少しています。これを克服するため肉厚0.3mm以下の超薄肉化と高強度合金の開発によりアルミニウム合金に匹敵する比強度への取り組みがなされました。この中で、湯流れ欠陥と変形が問題となり、その解決方法について紹介していただきました。

 

7.「耐熱マグネシウム合金の鋳造欠陥・不良と原因及び対策」
㈱アーレスティ 榊原勝弥 氏

耐熱マグネシウム合金は、汎用マグネシウム合金とは違う鋳造欠陥が発生し、不良の原因となります。同社がダイカストしている耐熱マグネシウム合金ダイカスト製オイルパンを例に、その特有な鋳造欠陥の発生原因と対策事例について紹介していただきました。

 

今回は、ダイカストにテーマを絞ってのセミナー開催となりましたが、次回は鋳鉄関連を中心にしたセミナーを企画しご案内いたしますので,そのときは是非ご参加いただきたいと思います。