関東支部の活動

研究

第24回加山記念講演会

第24回加山記念講演会が開催される

研究委員会 主査 吉田誠
櫻井 大八郎 氏
ご講演された児玉英世氏

 2012年4月20日、日立金属高輪和彊館にて、日立建機(株)児玉英世氏から、「自動車に代表される輸送機械の電子電動化と本質安全化の動向」についてご講演頂いた。
 児玉氏は東京大学大学院冶金学修士課程終了後、(株)日立製作所日立研究所に入社され、凝固制御技術の開発を担当し、鋼用同期回転式連続鋳造技術に必要な注湯条件、高温曲げ矯正条件、不純物の影響、鋳型内流動の凝固に及ぼす影響等を実験と数値モデルで明らかにされた。2001年日立研究所所長、2003年研究開発本部副本部長を歴任された。2004年日立オートモーティブシステムグループCTO兼同開発研究所所長として環境、安全、情報を融合させた自動車統合制御技術の研究開発を推進され、2011年より日立建機(株)でコンサルティング業務を担当されている。また、長年にわたり日本鋳造工学会の会員でおられる。
 講演の主な内容は、排気規制とHEV, EVの動向、電子制御化、軽量化、安全規制と本質安全化についてである。2030年においても、純粋なEVは世界の自動車生産台数の5%程度と予想され、95%は内燃機関を有する自動車で構成されると見込まれている。日本では50%の自動車ユーザーは一日30km程度しか走行せず、PHEV, EV で炭酸ガスをほとんど排出すること無く走行可能と考えられるが、現状では電池の値段が高価なことがネックとなっている。空気電極電池など、さらに小型軽量で大容量の電池の開発が急務であり鋭意進められている。パワーデバイスやモーターの効率向上、小型軽量化も急務であり研究開発が進められている。一方、内燃機関についてもダウンサイジング化により軽量化と燃費の向上が進められている。EPSの利用は3%程度の燃費削減に繋がり、補機類の電動化の効果も大である。一方で建設機械に目を向けてみても、ハイブリッド油圧ショベルなどの電動化が進められている。
 このように電動化が進む中でも、今後も鋳物の担う役割も大きい。例えば、ECU(エンジンコントロールユニット)にはダイカスト部品が多く使用されているし、耐摩耗、高強度、耐衝撃などが求められる建設機械用部品(市場規模は2兆円とも言われている)には、鋳鉄や鋳鋼などの鋳物製品も搭載されている。その他にも、鋳物の軽量化の事例をいくつか紹介された。

 最後に安全規制と本質安全化に関する最新の技術も紹介された。交通事故の形態としては、出会い頭、追突の割合が高く、事故の原因としては認知の誤りなどのトライバの事故直前の行動が75%を占めている。そのため近年は、ドライバの安全運転を支援するシステムの研究開発が進められており、一部はすでに実用化されている。今後、安全に関する法制化も進み、安全性向上のための電子制御技術もさらに進化するであろうとの事である。学生も含め多数の聴講者のもと講演がなされ、また活発な質疑応答がなされた。