関東支部の活動

研究

第85回関東支部講演会

第85回関東支部講演会開催される

研究委員会 主査 吉田 誠

 平成24年8月23日、来春全国講演大会が行われる山梨大学にて第85回関東支部支部講演会が開催された。今回は、山梨大学大学院、医学工学総合研究部工学学域、機電システム工学系の新進気鋭の2名の先生にご講演を頂き、活発な意見交換が行われた。

 中山栄浩先生には、高周波誘導加熱装置を用いたアルミニウム合金鋳物の急速昇温溶体化処理についてご講演頂いた。高周波誘導加熱装置をAC4CHアルミニウム合金鋳物の溶体化処理へ適用し,昇温加熱状況ならびに溶体化処理に伴うミクロ組織や機械的性質の変化について調査したところ、以下のことが明らかになった。

①高周波誘導加熱装置を用いると、室温から溶体化温度である560℃まで約13秒で加熱できた。さらに、急速加熱したにも関わらず、オーバーヒートも生じず保持時の温度変動も4℃以下に抑制でき、従来にない昇温速度と少ない温度変動が両立できた。

②3分という短時間での高温溶体化処理により、α相への溶質固溶量の増大が促進され、強度が向上することが確認できた。

③3分以上溶体化処理をすると、共晶Si粒子の粗大化が進み、粒子間距離の増大により、延性は緩やかに増大した。
既存の熱処理装置ではこれらの結果を得ることは困難であることから、溶体化処理における高周波誘導加熱装置の優位性を確認することができた。以上記したように、T6熱処理が必要な鋳物の生産性を向上させるための手段としての高周波誘導加熱の有効性について解説がなされた。

 続いて、野田善之先生からは、取鍋傾動式自動注湯機の高精度化を実現する制御技術についてご講演頂いた。

 最初に、取鍋傾動式自動注湯機の高精度化注湯を実現する制御システムについて紹介がなされた。注湯流量を制御することにより、鋳込重量や取鍋からの流出液体落下位置、湯口内液面レベル制御の高精度化が可能となる。しかし、注湯流量の計測は困難である。そこで、状態推定理論を用いたリアルタイム注湯流量推定システムを開発することとした。この注湯流量推定システムに基づき、鋳込重量制御、および落下位置制御技術が開発でき、自動注湯機の制御の高精度化を実現した。しかし、自動注湯機の搬送や傾動動作に起因して、生じる取鍋内に液面振動という別の問題も生じる。そこで、この液面振動を抑制し、かつ高速動作が可能な自動注湯機の動作制御システムについても開発を行った。講演ではこれらの最新の研究成果と、今後の取り組みについても紹介がなされた。