関東支部の活動

研究

第25回加山記念講演会

第25回加山記念講演会が開催される

研究委員会 主査 吉田誠
岡田 民雄 氏
ご講演された岡田 民雄 氏

 2013年4月18日、日立金属高輪和彊館にて、日本ルツボ(株)岡田民雄 会長から「開発は不可能を可能にする」についてご講演頂いた。

 岡田会長は慶応義塾大学文学部を卒業後、日本坩堝(現 日本ルツボ)に入社され、国内営業、海外営業部長等を担当された。1988年に同社を一度退社され、久能カントリー倶楽部取締役営業部長、総支配人を経て同社に復帰、その後。監査役、専務、副社長を務め、1996年2月に社長に就任、2007年6月には代表取締役会長に就任された。

 講演の主な内容は、「経営に対する考え方」、「人間関係の重要なこと」、「開発は不可能を可能にする」についてである。日本ルツボは1885年(明治18年) に前身会社である大日本坩堝会社として創業し、今年で128年目を迎える。講演では、会社の成り立ちや、戦中・戦後における会社の危機など、いくつかのエピソードを交えて会社の歴史が紹介された。そして、「この歴史ある会社を永遠に存続させたい、それと同時に社員が安心して働ける会社にしたい」という想いが経営に対する基本姿勢の根底にあり、そのためには利益の出る会社であらねばならないとのお話しをされた。

 次に「人間関係の重要なこと」では、岡田会長の母校である佐倉一高(現 佐倉高校)の生徒に語ったことを通して人間関係の重要性に触れられた。道徳心などの点数では表示できない、学校では教科にしにくい要素が人生を大きく左右していること、また挨拶や返事、約束や時間を守ることなども良好な人間関係を築き上げる基本である。また、デール・カーネギー著の「人を動かす」より、人に好かれる6原則(誠実な関心を寄せる/笑顔を忘れない/名前を覚える/聞き手にまわる/関心のありかを見抜く/心からほめる)が紹介された。その他にも、佐倉一高の2年先輩であった長嶋茂雄氏とのエピソード、自分の成長のために日記を書くことは効果的であり、今日あったことだけではなく、希望する明日や将来のことも書くと良いなどのお話しをされた。

 最後に「開発は不可能を可能にする」について講演された。この言葉は元慶応義塾大学塾長 小泉信三先生の「練習ハ不可能ヲ可能ニス」に由来した言葉であり、会社の存続において開発がいかに重要であるかをお話しされた。講演では、明治18年に日本の特許第1号を取得した漆特殊塗料工場(現 日本加工塗料(株))が今でも事業を続けていること、また日本ルツボでは明治43年に日英(ロンドン)博覧会で金賞を受賞し、その後国内外で17個の金賞を受賞されたこと、明治45年に特許第1号を取得していることなどを紹介し、明治時代から継承されている同社の開発マインドについてお話しされた。また、商品開発におけるネーミングの重要性について、自社製品(フェニックス、ゼブラックスなど)を例に挙げて語られた。その他にも、知識とニーズが出会って初めて新製品開発が進むこと、鋳造分野においては溶解重量を製品重量に近づけるところに開発のチャンスがあることなど、鋳造業界の発展への期待を語られる一方で、昨今の開発マインド縮小も危惧していた。

 岡田会長の“笑顔”、そして“活力”に満ちた講演に、会場の聴講者は話に引き込まれ、講演時間はあっという間に過ぎてしまった。この貴重な講演を聴講出来たことに感謝したく思います。

(東京工業大学 原田陽平)