公益社団法人 日本鋳造工学会関東支部 | 研究

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第86回関東支部講演会

第88回関東支部講演会開催される

研究委員会  吉田 誠

  2013年12月12日、日立金属高輪和彊館にて第88回関東支部講演会が「グローバル化におけるマザー工場の役割と溶湯流動挙動の可視化による現象解明」と題して開催され、2件の講演があった。

ご講演中の吉沢氏
ご講演中の小笠原宏明氏

 始めに、日産自動車(株)栃木工場第2製造部の小笠原宏明様より「グローバル化におけるマザー工場としての取り組み」と題して、グローバル化が進む中での開発体制や技術技能の伝承を中心にご講演頂いた。1990年代以後、国内生産台数は半減し100万台程度になっている。一方海外生産台数は2倍以上に増加し、新興国での新工場も計画されている。このように生産のグローバル化が進む中、日本国内で新技術・新工法を開発し、量産技術を確立してから海外へ移転している。開発では「Simultaneous Engineering」と称し、部品図作成から試作、実験まで一気通貫体制で実施することで開発リードタイムを短縮している。その一例としてサスペンションメンバーの加工レス化によるコスト削減について紹介した。量産技術、技能の転写についてもシステマチックに行っている。国内工場はグローバルマザープラントであり続ける必要があるが、現地化の加速による空洞化と年齢構成の高齢化に伴い、いかに技術・技能を伝承するかが課題となっている。そこで、栃木工場では現場単位で責任を持って自ら改善できる体質をめざし、セブンイレブンジャパンの経営手法になぞらえ、「コンビニ経営」と称する活動を行い、大きな成果を上げていることを紹介した。
 また、作業者の視点から作業内容を分析するために視線カメラの活用、動画による作業手順の指導を取り入れるなど、作業者の癖まで指導できるようにし、標準作業書のレベルアップ活動を行っている。さらに人材育成においても、製造現場で自主保全できる体制を目指し、工場内に設備や金型保全の技能士育成講座や技能道場を設けることで製造現場のスキルアップを図っている。その結果、国家技術検定合格者が増え「現代の名工」も生まれるようになった。

ご講演中の吉沢氏
ご講演中の相田悟氏

 引き続き、東芝機械(株)ダイカストマシン技術部の相田悟様より「鋳造条件による溶湯射出状況の影響」と題して、最新の溶湯流動観察技術を駆使した研究成果をご講演頂いた。毎秒4万フレームのカメラを用い、短時間充填における溶湯飛散を直接観察し、ゲート厚さ、ゲート断面積、射出速度は変化させた時のゲートからの噴出状況を考察した。特に、独自の画像解析ソフトを開発した結果、射出された溶湯の輪郭が明確になり、溶湯の粒の移動速度がわかるようになり、これまでわからなかった、下記の現象が解明されつつある。

 ①層流から噴流に変化するゲート速度は4メートル毎時であった。
 ②ゲート通過後に高速切り替えする場合の充填挙動は加速度に依存し、
  高速射出時はゲート速度が大きいほど溶湯が細かい粒状になる。
➂射出速度が上昇すると飛散角度が拡大していた。これにより溶湯の輪郭が明確となった。
④観察された溶湯の速度は計算上のゲート速度よりも遅く、ゲート速度50メートル毎秒以上にしても噴出状況に変化はない。ゲート速度が大きくなるほど巻き込むガスも細かくなり、鋳巣の割合が小さくなる。

 今回の講演会では、今日本が直面するグローバル化に対する対応、あるいは最新の観察技術により初めて観察されたダイカストの射出状態なども紹介され、活発な討論がなされていた。