関東支部の活動

研究

第3回関東支部学生講演会

(公社)日本鋳造工学会 関東支部YFE委員会

はじめに

今回で3回目となる標記学生講演会が、2017年12月9日土曜日に日立金属高輪和彊館で開催されました。当日は、50名を超える聴講者が集まったため、急遽、臨時の席を設けるほど盛況でした。本保関東支部長の挨拶に始まり、小林研究委員会委員長が司会を務める中で3件の講演発表が行われました。以下ではその概要についてご報告させて頂きます。


写真1 水野裕登君(早稲田大)の講演の様子

1件目は、早稲田大学大学院総合機械工学専攻修士課程2年の水野裕登君から「凍結凝固組織に基づくFEMを用いた半凝固状態の合金の粘弾塑性特性予測」と題した講演が行われました。講演では、鋳造時の半凝固状態における粘弾性特性の意義や研究の必要性、従来研究の概要、ならびに当該研究の特徴などについて、懇切丁寧な説明が行われました。粘弾性特性に関わるノートン則のパラメータ(nとk)について、実測値と解析値の間には良好な一致が見られることから、提案手法が有効であることが、詳細かつ系統的な研究データに基づいて示されました。最後にI-beam試験を用いた凝固割れに関する検証実験が報告され、提案手法に基づく解析結果の有効性が紹介されました。


写真2 宋濫君(東工大)の講演の様子

2件目は、東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻博士課程3年の宋濫君から「縦型高速双ロールキャスト法によって作製したAl-Mn系合金板材の微細組織に及ぼす冷却速度の影響」と題した講演が行われました。講演者は来日3年目をむかえるそうですが、流暢な日本語で分かり易い説明をしていただきました。溶湯から薄板をダイレクトに作製できる可能性が期待できる縦型高速双ロールキャスト法について、凝固形態、冷却速度、固溶濃度ならびに第二相粒子の分散状態などの観点から実験結果に基づいた詳細な説明が行われました。講演後の質疑応答時には、当該研究分野に詳しい聴講者から「是非、アルミニウム缶の製造に直結する実用化レベルまで研究を進めて頂きたい」旨の発言がなされ、当該研究に携わっている喜びを改めて噛み締めているようでした。


写真2 宋濫君(東工大)の講演の様子

3件目は、山梨大学大学院工学専攻修士課程1年の矢嶋泰斗君から、「流量操作を可能とする自動注湯機の開発」と題した講演が行われました。取鍋傾動式自動注湯機の高精度化を目的とした、注湯流量や注湯位置の制御システムの開発に関する講演です。聴講者の多くは金属材料を専門とする技術者ですが、動画を駆使した分かり易い資料が奏功して研究の意義や価値を十分に伝えることができたので、講演後の質疑応答時には活発な意見交換が行われました。ある聴講者からは、「講演者は修士課程の1年生ですか?きちんと教育されていて将来が楽しみですね。」とのお褒めの言葉があったことをご紹介させて頂きます。


おわりに

今回の学生講演会を通じて、各講演者が気後れすることなく堂々と発表していたことが印象的でした。また質疑応答時の企業技術者からの厳しい質問に対しても、的確かつ分かり易く応答していた学生さんたちの姿には、とても感心すると同時に頼もしく思われました。さらに講演終了後の懇親会においても、講演者を交えた懇談が時間の許す限り活発に行われていました。開催時期の関係もあり、各種団体が開催する年次時大会等では体験することができない良い経験になったのではないでしょうか? 一方で、「講演時間が長いために修士の学生では負担が大きい」、ならびに「様々な大学からの講演が望ましい」などのご意見も頂いておりますので、次年度の企画に向けて参考にさせて頂きたいと存じます。