関東支部の活動

研究

第4回関東支部学生講演会

(公社)日本鋳造工学会 関東支部YFE委員会

 今回で4回目となる標記学生講演が、2018年12月14日金曜日に日立金属高輪和彊館で開催されました。師走にもかかわらず、40名を超えるみな様にご参加頂きました。今西関東支部長の挨拶に始まり、小林研究委員会副主査が司会を務める中で、3件の講演発表と熱心な討論が行われました。以下ではその概要についてご報告させて頂きます。


写真1 加藤祐樹君(ものつくり大)の講演の様子

 1件目は、ものつくり大学大学院ものつくり研究科修士課程2年生の加藤祐樹君から、「AC4C合金の流動長に及ぼす金型表面溝の影響」と題した講演が行われました。過去2回の全国講演大会における報告内容に直近の検討成果をあわせ、修士課程の修了に向けた集大成の研究成果についてご報告を頂きました。V溝の有無やその数ならびに配置が流動長に与える影響について、系統的かつ丁寧な実験に基づいた貴重な研究成果が紹介されました。またシミュレーションによる計算結果との対比を交えて、V溝付与に伴う空気層の導入が溶湯・金型間の熱伝導に影響を与え、結果的に流動長が増減することを明瞭に示して頂きました。

 


写真2 大槻晃平君(群馬大)の講演の様子

 2件目は、群馬大学大学院修士課程2年生の大槻晃平君から、「ポーラスアルミニウムをコアとしたサンドイッチ構造体」と題した講演が行われました。比強度に優れるアルミニウムの特性を一段と引き上げることが可能なポーラス構造にかかわる諸課題の克服に向け、表面材を取り入れたサンドイッチ構造体に関する最新の研究成果が報告されました。摩擦攪拌法を適用した独創的な製造方法が紹介されるとともに、ポアの生成制御や評価方法、ならびに力学特性に対する影響などについて系統的かつ詳細な説明が行われました。

 

 


写真3 宮崎碧海君(都市大)の講演の様子

 最後は、東京都市大学大学院工学研究科修士課程2年生の宮崎碧海君から、「厚肉球状黒鉛鋳鉄の疲労亀裂進展特性に及ぼすMn含有量の影響」と題した講演が行われました。Mn添加量に依存してミクロ組織は変化するものの、疲労亀裂の進展特性に及ぼす影響は明瞭で無いことが詳細な実験データに基づいて示されました。くわえてMn添加量の増加に伴い引張強さや硬さは増大する一方で、靭性が低下する理由などについて、ミクロ組織や破断面の観察結果に基づいて懇切丁寧な説明が行われました。

 過去3回の学生講演における講演者の多くは博士課程の大学院生でしたが、今回の3件の講演発表はいずれも修士課程2年生の大学院生にご担当頂きました。また「様々な大学の学生さんに講演して頂く」という昨年度の課題についても達成することができました。ご理解とご協力を頂いた関係各位のみな様に、衷心より厚く御礼申し上げます。くわえて特に印象的なこととして、懇親会の状況を紹介させて頂きます。懇親会に招待された講演者に対して他大学の学生ならびに企業経営者・技術者から講演発表に対する感謝の気持ちが伝えられるとともに、多岐にわたる話題について意見交換を行い大変盛り上がっていました。このような機会が継続されることを通じて、所属大学を超えた学生の交流促進ならびに学生と鋳造業界との距離が縮まることを切に願ってやみません。

 最後に、ご講演頂いた3名の大学院生に御礼申し上げるとともに、無事に修了されることを心より祈念しております。また今回の講演会にご参加頂けなかった関東支部のみな様方におかれましては、是非、来年度はご参加下さいますようお願い申し上げます。