関東支部の活動

YFE

「子供いもの教室」開催

2005/5/26 物質・材料研究機構 高森 晋

 関東支部では2回目となる「子供いもの教室」が5月26日(木)東京工業大学大岡山キャンパス内にて行われた。今回参加していただいたのは、大田区立洗足池小学校の5年生57名と付き添いの先生3名である。今回も製作指導は埼玉鋳物技能士会の方々にお願いした。

 まず、鋳物とは何か?という講義からスタート。机の上には、自動車部品から、信号機の枠、パソコンのフレーム、鉄瓶、美術品まで様々な鋳物が置かれてあり、鋳物をじかに手で触りながら、講義を受けてもらった。おおまかに、作業手順、注意事項を聞いてもらった後、いよいよ作業開始。

 まずは、キャラクターデザインの木枠を選ぶことから始まった。子供には評判のデザインである。次に、水ガラスと混練された砂を木枠にいれ、ハンマーの柄の部分で突き固める。少しずつ砂を入れ隅々まで丁寧に突く子や、大胆に砂をいれ力強くスタンプする子など、突き固め方にも個性が出る。スタンプが終わったら、表層を平らにし、炭酸ガスを吹きかけ硬化させる。鋳型を木枠から取り出したらイニシャルを逆さ文字で入れる。その後、鋳型を8個ほどクランプで束ね、炉の前に設置する。鋳物技能士会の方が亜鉛溶湯を柄杓ですくい、鋳型に一つずつ注いでいく。普段お目にかからない銀色の液体が、砂型の中に注がれていくのを子供たちが固唾を飲んで見守っている。この瞬間は、みんな無口になっていた。

 冷えて固まった後、鋳型を壊すと固体の金属が出てくる。さっきまで、液体だったのに今はもうかちかちに固まっている。液体ではないことをあらためて確かめるように、子供たちは鋳物を叩いてみる。グラインダーでバリをとった後は、サンドペーパーで作品を磨く。我々にとっては、ありふれた研磨紙であるが、子供には魔法の紙のように思えたのだろうか。「この紙もらっていいですか?」と子供たちが聞いてくる。作品が輝きだすと子供たちの表情も輝きだした。溶湯の温度が安定していたせいもあるのか、引けもほとんど出ず、出来上がった鋳物の鋳肌も良好であった。

 鋳物作製が終わり、質問タイムに入る。「鋳物って世界に何種類あるのですか?」との難題に講師もたじたじである。「将来、鋳造関係の仕事をしてみたい人?」との問いかけに、約半数の子供たちが手を挙げた。YFE担当者の間から思わず拍手。副校長先生からも「こんなに身近に鋳物があるとは知りませんでした。」とかなり興味を示していただいた。先生方に鋳物に興味を持っていただいたことも大きな成果である。先生を通して鋳造など物作りに興味を持ってもらう教育に力を入れていただければ、子供いもの教室の主旨からして大成功である。世界に一つしかない鋳物を手に握りしめ、元気よく「ありがとうございました」とお別れの挨拶をした後、子供たちは学校へと戻っていった。

 最後になりますが、参加していただいた洗足池小学校の皆様はじめ、埼玉鋳物技能士会の方々、東京工業大学の学生のみなさん、快く溶解を引き受けてくださった日本ルツボの方々のご協力のもと、無事、子供いもの教室を終えることができました。本紙面を持って皆様に御礼申し上げます。