関東支部の活動

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第150全国講演大会「子供いもの教室」と「鋳物体験教室」

(独)物質材料機構 高森 晋

 もの造りの楽しさを知ってもらいたいということで始まった小学生対象の「子供いもの教室」であるが、今回新しく高校生を対象とした「鋳物体験教室」も開催することになった。5月18日、千葉工業大学芝園キャンパスクラフトハウスにおいて「子供いもの教室」は午前中に「鋳物体験教室」は午後に行うことに決定し当日を迎えた。

鋳型づくりの順番を待つ子供たち、待ちきれない? 今回参加する小学生は、習志野市立秋津小学校の5年生2クラス、総勢48名である。学校は地元大学との交流を深めたいという希望もあり問題なく決まった。朝10時、子どもたちが先生に引率され元気よくやってきた。まずは机の上に置かれた鋳物を見ながら何処でどの様に使われているのか、私たちの生活には欠かせない重要な物であるとの話を聞き、次ぎに鋳型の作り方や作業の注意点などの説明を受けた。小学生ではあるが、非常に注意深く聞いていたように思う。

 さて、本番の作業の開始である。作業指導は今回も埼玉県鋳物技能士会の面々、子供たちは自分好みのキャラクター木型(模型)を選び、それを鋳枠内にセット、上から砂を隙間無く押し込んだ後、砂型に炭酸ガス吹込み固める作業を開始した。きれいに模型形状が砂に転写されるので、みな驚いている。自分のイニシャルを鏡文字で砂型に彫るが、初めての鏡文字に悩んでいる子も多かったようである。できた鋳型を並べて溶けた亜鉛(約500℃)を注湯。(今回も溶解炉は、日本ルツボ(株)様よりお借りした。安定した溶解温度が得られるので非常に具合が良い)砂型から取り出し、湯口を取り除いた後、鋳バリをヤスリやグラインダーがけをして仕上げて完成。
「どうして砂が固まるの?」など小学生らしい素朴な質問も多く、みんないろんなことを考えながら作業していたようである。満足のいくものができたのであろうか?カメラに向かいにこやかにハイポーズというシーンも見られた。
午後からは、初の試みである高校生対象の「鋳物体験教室」を開催した。この話が出たときには、どのような内容にするかが我々委員の悩みの種であったが、日野自動車(株)様からのご協力で無事開催にこぎ着けることができた。

奮闘中の生徒さん 鋳造するのは、日野自動車特製のミニチュアエンジンブロックでペン立てとして使用できる。はじめに一連の鋳造工程を知って貰うため、選ばれた2人の代表者に炭酸ガス型の作りを体験、他の生徒にはそれを見学してもらった。その後、日野自動車さんに用意して頂いた鋳型(中子と主型)一組が一人々に渡され、湯道と堰を切ってもらう。これらは主型と中子が作る空間に溶湯が注がれるように三次元的な構造を考えなくてはいけないので、先生役である日野自動車の方々のアドバイスを受け戸惑いながらも自分の鋳型を完成させた。次は注湯であるが、高校生ということもあり、できるだけ本人に注湯させるようにした。渡された柄杓を緊張ぎみに手にして、恐る恐る注ぎ口に持っていき傾ける。「もっと腰を低く」などと言われながらもみんなやり遂げた。ここ迄はスムーズだったが、予想外にも中子砂がうまく取れずヤスリ片手に四苦八苦。主型と中子の隙間が大きな型(できの悪い型)では湯が入り中子の穴に蓋が出来てしまったためである。多少時間超過はあったが、きれいなエンジンブロックが仕上がった。鋳物の話を聞いているときは、みんなピンとこない顔つきだったが、いざ作業を始めると必死の形相で中子砂と格闘しているのが印象的であった。

 また、小学生、高校生とも学内を見学して、大学の雰囲気をそれぞれに感じ取ったであろう。今回は、単なる鋳造教室というよりは小学、高校、大学生、企業人、大学の先生などの方々が集う良い交流の場ができたように思う。

 最後になりますが、今回の、「子供いもの教室」、「鋳物体験教室」に、参加していただいた秋津小学校、千葉黎明高校の皆様はじめ埼玉県鋳物技能士会、日野自動車(株)の方々、千葉工業大学の先生やアルバイトの学生、快く溶解を引き受けてくださった日本ルツボ(株)の方々のご協力のもとに無事やり遂げることができました。本紙面を持って皆様に御礼申し上げます。

 後日、秋津小学校のみんさんから感想文集が届き、こども達の素直な感性に触れ、我々嬉しさ一入である。また千葉黎明高校の先生からもお礼のお手紙を戴き「やって良かった、これからも続けたいね」の声があちこちで上がった。