会員向け情報

リレーエッセイ

今だからこそまじめに考えよう!

日産自動車 パワートレイン技術開発試作部  神戸 洋史

 2005年2月16日にCOP3で採択された京都議定書が発効されました。日本では温室効果ガスを1990年比で2008~2012年に平均6%削減しようというものです。しかし、2003年度ではCO2排出量は逆に8%増加しており、この目標達成は非常に困難な状況にあります。私の所属している自動車業界では、自動車の燃費を何とかして向上させてCO2排出量を削減しようといった努力がなされていますが、材料の生産も含めて自動車を生産する時に排出されるCO2については、なかなか削減が難しい状況です。技術的に難しいことに加えて、コスト削減と相反する課題となってきていることもあります。

 一方、鋳造現場に関する環境問題としては、温室効果ガスの削減だけではなく、粉塵や臭い、熱といった作業環境の問題も大きいといえます。地球環境を守るだけでなく、労働者にとって働きやすい環境を作っていかなければ、将来の労働力不足に対応していくことはできなくなってきます。コスト削減が大きな要求となってきている今、環境対策にはなかなかお金がかけられない状況があります。しかし、今一度、この対策をまじめに考えていかなければ、鋳造のみならず日本の生産業の将来に期待できないのではないでしょうか。

 私が子供の頃、高度成長期には、日本中あちらこちらで公害が発生していました。自動車の排出ガスやコンビナートなどから排出される煙により病気になる人も数多くいました。しかし、今では自動車の排出ガスもクリーンになり、また、空には青空が戻ってきて、空気が澄んできました。これは、先人たちがまじめに技術開発に取り組んできた成果であると思います。また、政府による規制強化や訴訟問題などもあり、これらが技術開発の原動力になっていることも否定できません。確かにこのような圧力により技術は著しく進歩します。しかし、今、それを待っているような状況ではないと思います。早く対処しないと我々の将来は危ないのではないでしょうか。今だからこそ我々一人一人が将来に向かって本当に何が必要なのかをしっかりと考えて、それに向かって努力して行こうではありませんか。