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リレーエッセイ

試験とオリンピック

有限会社 日下レアメタル研究所  鹿毛秀彦

 12月※)に特集「鋳鉄鋳物のきずと欠陥の境界:(機械的性質と非破壊検査)」をまとめた。執筆者他ご協力いただきました方々に厚く御礼申し上げます。早速、読者の方からお電話頂き嬉しい限りでした。曰く「客先との間で《きず》と欠陥の境界線に差がある。」「学識経験者を入れて適正化されれば不具合品が減る。」、「原価、エネルギーコストが下がる。」となれば「CO2ガス排出量が削減され地球温暖化防止につながる。」とのこと。製造側の切実な思いである。境界線すなわち評価基準は往々にしてこのようなものである。消費者の安全と環境保全の立場から適切な評価基準と評価方法について投じた今回の特集を前向きなシステム作りに繋げていきたい。関係各位皆様のご支援ご協力をお願いします。

 さて、今年の冬は寒波、豪雪のニュースが多かった。東京では寒さだけが堪えるが,雪の多い所の方々のご苦労を思うと申し訳ない。暦は、節分(かつては大晦日)そして立春(かつては新年/2月4日)と止めどなく経過し,三寒四温で季節は移り変わっていく。例年1~2月は受験シーズン、試験結果に一喜一憂している親と子そして関係者がいる。私の場合は大学に合格するまで3年もかかったが、合格すれば「終わりよければすべてよし」で、これが我が人生の大きな岐路となった。振り返ると小、中、高、大学から就職するまで、いやその後も幾つもの試験を経験してきた。試験好きな方は少なく嫌いな方が多いいだろう。かつて私も大多数の一人であったが、ISOを勉強して「自分の品質を上げる為に必要不可欠だ」との考えに変わりました。「試される」のは嫌いでも自分の実力を評価する場であると考えれば、試験も楽しめるだろう。人生の大きな節目、自分の品質を上げるハードルなのだから積極的に利用すべきなのである。

 2月11日から始まった冬季オリンピックも一つの試験、評価の場である。いつくもの競技大会(試験)を勝って選ばれた代表選手は、抱負を聞かれて「楽しんできます。」とか「楽しみにしていてください。」とか頼もしい。一昔前の控えめで緊張した感じからすると前向きですがすがしい。先ずはこの気持ちが大切なのである。オリンピックに向けてきつい練習で自らを鍛え、怠りない準備の上で臨むだから、最高のステージでプレッシャーに負けることなく自らの実力を遺憾なく発揮し多くのメダルを取って欲しい。これまでに,モーグル(フリー),スノーボード(ハーフパイプ)、ジャンプ(ノーマルヒル)、500mスピードスケートと期待の競技が終了、メダルのニュースはまだ無い。彼らの実力がどの程度なのか我々はメダルの数でしか評価できないが、最後まで応援したい。選手は、それぞれの結果を十分に消化し、この経験をこれからに繋げてほしい。

※)鋳造工学:Vol.77(2005)793~840