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リレーエッセイ

戦国の武将に危機の乗り切り方を学ぶ

日立金属(株)素材研究所
YFE企画担当 副主査 吉沢 亮

 我が家の息子も小学校4年生になり、今年のNHKの大河ドラマを家族そろって見られる年頃になり、毎回欠かさず見ている。主人公は上杉家の家老の直江兼続、戦国時代最強の武将、上杉謙信に才能を見出されて、謙信の死後、後継の上杉景勝の代に二十歳前という若い時から家老として、様々な苦難を乗り切ってきた戦略に長けた武将である。
 3月の放送では上杉謙信が亡くなったのをきっかけに、2人の養子:上杉景勝と景虎の跡継ぎ争いになり、これに乗じて周囲の北条や武田が勢力拡大を狙う、まさに上杉家存亡の危機を描いていて非常に面白いところだ。兼続の主君:景勝は、跡継ぎ争いをしている景虎との苦しい戦いの中、武田、北条からも攻められ後がない、そこで彼は、敵対する武田家との和睦という、上杉家のこれまでの外交方針を大転換するような、だれも考えないような奇策で周囲も納得させて、危機を乗り切ってゆく。
 中身は違うかもしれないが、昨年からのアメリカ金融危機をきっかけに、全世界の経済情勢が急に悪化する中、我々鋳造業においてもどうやってこの危機を乗り切ってゆくのか、そして次に経済状況が回復した時に再び繁栄を手にしようと必死に模索している状況は、直江兼続の当時と共通するものを感じている。今はコンピュータやITが発達し、入手しようと思えば、多量の情報を容易に入手できるが、戦国時代はそんな情報ツールもない中、敵の情報をどのようにつかみ、敵の心理をどう読み、どんな戦略がベストか考え抜くのもさぞかし大変だったに違いない。時には間違った情報を流して有利に事を進めようとする、ずるがしこいものもいたかもしれないが、今と比べたら、はるかに賢かったのでは、ともふと思ってしまう。もし、今の時代に彼のような戦略家がいたら、どのように危機を乗り切るのだろうか?
 いろいろと書いてきたが、鋳物産業を支える自動車の大不況をどう乗り切るか、またその後の世の中において、どのような成長のシナリオを作れるか、今こそ徹底的に考え抜き、知恵を出すチャンスだと思う、今日この頃である。(了)