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リレーエッセイ

春への準備

日産自動車㈱パワートレイン技術開発試作部
神戸 洋史

各社の2008年度の業績が出ました。予想したように、あるいはそれ以上に厳しい内容となっています。もっとも、昨年の秋から厳しい状況が現実のものとなり、「臨時休業」や「派遣切り」といった言葉が飛び交っていましたから、当然の結果なのかもしれません。各会社の危機管理がかつてよりもうまくなったこともあるようで、対応が早く、在庫の削減も割合進んできていて、そろそろ底かなといった感じがないわけでもありません。しかし、今年度の業績予想を見てみると、赤字幅が拡大するというメーカーもあり、まだまだ回復するというわけではなさそうで、ここ2,3年は厳しい状況が続くのは間違いなさそうです。
 こうなると、各企業は設備投資や経費を絞ります。当然、売り上げが減少するわけですから、支出を抑えるのは当たり前のことで、経営者としては当然のことだと思います。まず緊急に必要とされない経費から削減されます。学会との関係で言えば、各種のシンポジウムや講習会、講演大会への参加見合わせ、研究部会からの脱退、維持会費の削減あるいは退会など直接、企業活動に関係しないところから切り捨てられていきます。昨年度末に企画されたシンポジウムや講習会は悲惨な結果だったようです。私も、鋳造工学会で全国講演大会の実行委員や研究部会での活動をしているとこのようなケースが多々あることを身にしみて感じています。しかし、本当にこれていいのかと疑問に思ってもいます。確かに、無駄な経費というものは存在していると思いますが、このような時に真っ先に削減されてしまうこのような経費は、本当に切ってもいいものなのでしょうか?
 今は確かに厳しい冬の状態です。しかし、永遠に冬が続くわけではありません。必ず春は来ます。その時に他社に先駆けてスタートを切れるかどうかが大切です。そのためには冬の間に十分な準備をしておく必要があると思います。学会での活動は、すぐに結果が出しにくいこともあり、確かに無駄なもののように見えるかもしれません。しかし、情報収集や仲間を作ることに関して言うとこれほど効率の良いところはないと思います。研究部会などは、年間数万円の経費でかなりの情報が入ってきますし、いろいろな人の意見を聞くことができます。学会をもっと有効に利用することを企業としても考えていく必要があるのではないでしょうか?
 今、日本鋳造工学会では、ビジョンを作成し、学会としての将来を考え始めています。学会の立場からはもちろんですが、企業の技術者あるいは経営者の立場でも学会にどうなっていって欲しいのかをしっかり考えて、変えていく必要があると思います。
 今の時期だからこそ、しっかりやっておいたほうが良いことがあると思います。十分な準備の上で、暖かい春を迎えたいものです。