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「銑鉄」が消える?
高森 晋
一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安として常用漢字がある。この見直しが行われており、2010年2月、文化審議会が文部科学相に答申し、同年秋に内閣が新漢字表を告示するとのことである。その中で削除予定の漢字の一つに銑鉄の「銑」が含まれている。 実際に銑鉄が消えるというわけではないが、「銑」という漢字が新しい常用漢字表では削除されるらしい。 そうなると「銑鉄」を「せん鉄」と書くのであろうか? もっとも常用漢字とは一つの目安であるから、それに従う必要はないのかもしれない。常用漢字でなくとも常用されている漢字はたくさんあるわけで、公共性の高い都道府県名に用いられている漢字でも常用漢字ではないものも多く、「埼・阪・岡・茨」は現在のところ常用漢字から外れており、今回追加される予定である。 常用されている漢字が常用漢字ではなかったりするから正直驚きである。
確かに「銑」は限られた分野の人しか使わない漢字ではあるが、鉄鋼関連の方も多いであろうし鉄鋼生産量を考えると削除対象なっているのは以外に感じた。一般の社会生活において、という意味からすると外れるのであろうか? ちょっと調べてみたら、常用漢字の中で、書籍860冊分の凸版組版データを対象とする総漢字数49、072、315字に対し漢字出現頻度数調査を行った所、最も出現順位が低かったのは「銑」であったらしい。ということで削除対象のNo。1になったようである。生産量が多くても漢字の使われ方が極めて限定的なのでそういう結果になったのだろう。
その一方、冶金の「冶」が認められたようである。恥ずかしながら、大学に入った当初私は「冶金」が読めなかった。友達と「これなんて読むの?チキンじゃないよね」と言っていたのを覚えている。そういえばどこかの研究機構でも外国の先生が講演されるときに所内放送があり「・・・○○○チキン研究所の・・・」と繰り返し言っていた。学校で習うようになればこんなことは起こらないであろう。銑鉄なら習わなくても「センテツ」と読むであろうから恥ずかしい思いはしなくてすむかも?
さて鋳造工学会の皆さんは「銑」の字が常用漢字から削除されることについてどのようにお考えであろうか? ちなみに常用漢字から削除される予定の他の漢字は「勺・錘・脹・匁」である。