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山が語る太古の海
“世界最高峰エベレスト(8,848m)の頂上から4億6千万年前(古生代・オルドビス紀)の地層で海生生物の化石が見つかっている。”これは、世界一高い場所がかつては海の底だったことを意味する驚くべきことです。山好きな者は、エベレストの頂上直下を横切る変成石灰岩からなる『イエローバンド』と呼ばれる大理石が風化して黄褐色になった岩層があることを知っています。岩肌がもろく崩れやすいため登山家の間では登頂最後の難関として恐れられていたそうです。この地層からは「ウミユリの化石」等が発見されています。
ヒマヤラ山脈は、約5千万年前にインド大陸がユーラシア大陸(アジア大陸)に衝突して、
その下に潜り込み、地殻をねじ曲げながら、当時地中海から日本海近くまで続いていたとされる「テーチス海」と呼ばれる海が隆起して形成されたと考えられています。そして、現在もその衝突は継続しており、インド大陸はアジア大陸の下に潜り込んでいます。
エベレスト山頂の石灰岩からは「三葉虫」や「ウミユリ」の化石、そして「アンモナイト」等も発見されています。これは、かつて南半球にあったインド大陸の大陸棚上に棲息していたとされる海生生物が4億6千万年前の海底にいたことを物語るものです。
海なし県の栃木県でも山に行くと太古の海を見ることができます。たとえば、桐生川上流の凝灰岩の近くの石灰岩の崖から、「サンゴ」や「フズリナ」や「ウミユリ」や「サメの歯」などの化石を採取することができます。これらの化石生物は古生代(2億5千万年前)の海だけに住んでいたものです。その頃の桐生周辺は比較的深い海と浅い海が入り混じった地形で、深めの海には「放散虫」や「コノドント」という針の先ほどの小さな生物が生息し、浅い海はサンゴ礁になっていました。その後、これらは長い年月を経て堆積し、前者は化石を含むチャート層に、後者は石灰岩になり今日に至っています。
栃木県の足尾山地を構成する主な地層は、チャート、泥岩、砂岩、凝灰岩、石灰岩等の海成の堆積岩と火成岩、さらに堆積岩が熱を受けて変質したホルンフェルスの変成岩から構成されていますが、代表する岩石は何といってもチャートと石灰岩です。この地層は京都地域の地層(丹波帯)とよく似ており、岐阜県南部(美濃帯)、八溝山地、北上山地の南部にも似た地層があり、これらは同一起源の地層(2億5千万年前)と考えられています。
岩石は「堆積岩」 「火成岩」 「変成岩」の三つに分けられますが、「チャート」は主成分が二酸化ケイ素(SiO2、石英):シリカの堆積岩です。これは、放散虫(プランクトンの一種)・海綿動物などの動物の殻や骨片(微化石)が海底に堆積してできた非常に硬い岩石で層状をなすことが多くなっています。層状チャートは数cmの厚さのチャート部分と、数mmの厚さの泥質層との繰り返しで構成されています。花崗岩(みかげ石)は地下深部のマグマが地表近くに上昇し、途中で冷えて固まったものですが、層状に堆積したチャートが花崗岩からの熱変成を受けてけい石になったと言われています。
弊社(日瓢鉱山)は、足尾山地の層状チャートの南に位置する横根山(1,300m)の中腹にあり、2号~8号までの粒度の人造けい砂を製造するためにけい石を採掘しており、採掘し始めてから早や50年が経過しました。けい石の元になるチャートは、一般に約0.1~2.5mmの放散虫などの小さな生物の化石から構成されていますが、中には15mmのものもあり、採掘する鉱山の切羽によってもけい石の粒度が多種にわたります。
永年にわたり採掘した結果、最近は必要な粒度のけい石が思ったとおりに採掘できず苦慮しています。そのため、同じ破砕機を何度も通したりして効率の悪い生産工程を余儀なくされているのが現状です。数年前より新しい鉱山の開発を計画、近くにある岩岳という新しい鉱山を取得することが出来ました。近々採掘が可能になりますが、これで顧客にご迷惑をかけずにけい砂を供給させて頂くことができると思っております。
けい石は私達の限りある資源です。けい砂という自然の恩恵を最大限に受けながら、これからも社会に貢献し続けたいと願っております。