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研究生活を振り返って
吉田誠研究室 博士後期課程 本山 雄一
1. はじめに
現在、早稲田大学創造理工学研究科総合機械工学科吉田誠研究室の博士課程に所属しています。学部時代は、物質開発工学科で勉強していました。溶かした金属を固めて作ったものを鋳物と言い、自動車の部品等は鋳造で作られている部品が多いと始めて知ったのは学部時代の授業でした。当時は、「いもの」という響きがものすごく古臭く聞こえ、衝撃を受けた事を今でも覚えています。その後、金属組織の授業で、鋼、鉄の状態図を学び、身の回りにある金属部品は、実は様々な組織を持っていることを学び、興味を持つようになりました。用途に応じて組織を制御する、そこに面白味を感じて研究室選びでは、組織材料組織学研究室である吉田研究室を志望しました。
2. 研究生活について
現在は吉田研究室で鋳造時に鋳物に生じる残留応力や歪の予測と制御をCAE (Computer Aided Engineering)を用いて検討しております。CAEを用いた研究というと、ずっとモニターとにらめっこだと思われると思います。しかし、解析と比較するために各務記念材料技術研究所(旧鋳物研究所)で実際に鋳造実験も行っています。
このような学生生活を送りながら、鋳造は本当に奥が深いと思ったエピソードがあります。あるとき、鋳物をAl-Mg合金で作ろうとしたことがあります。しかし、鋳造直後に必ず凝固割れを起こしてしまいました。そこで、凝固割れし辛いAl-Si共晶合金で鋳造しなおしました。すると凝固割れはしなくなったのですが、今度は冷間割れが必ず起きてしまいました。複数の冷間割れをおこした破面を良くみると、注湯時に巻き込んだと思われる介在物らしき黒いものがありました。ですので、冷間割れは介在物が存在する面で起きており、介在物が原因だということがわかりました。これらの経験から、自分の研究テーマである残留応力や歪以外にも介在物の問題や凝固割れ等様々な欠陥が存在し、良品を作るにはこれらの欠陥の制御を行う必要があり、鋳造とは奥深いプロセスだと感じています。
3. おわりに
吉田研究室では、毎年1回、企業の方を招いて行う研究会があります。この研究会では、研究室の学生が沢山の業界の諸先輩方にご指導頂いております。非常に厳しい指摘もあるのですが、研究会後の懇親会では、暖かい言葉をかけて頂きいただいておりまして、本当素形材分野の諸先輩方には感謝しています。今、行っている研究が微力ながら素形材産業のためになるように、残りの研究生活をすごしたいと思います。そして進路は、まだ決まっていませんが、学校を卒業しても、諸先輩方がそうしておられるように、この素形材業界を志す後輩の指導を行う事が出来ればよいなと思っています。