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リレーエッセイ

「つくば」って、どんなとこ

(独)物質・材料研究機構 大澤 嘉昭

大澤 嘉昭 外国などに行っても、日本のつくばから来たと言うと分かってもらえるように、「つくば」は有名だ。この場合の「つくば」とは科学の街「つくば研究学園都市」を指す。つくば研究学園都市は、過密な東京にある国の研究機関を移転し、新たな科学技術の拠点を造る目的で出来た人工都市である。1963年に計画がスタートし、関東周辺4カ所の候補から筑波山麓が決定された。東京からは直線でほぼ60km(JR東海道線では東京駅から平塚駅くらい)。研究所の配置では北から南まででJR山手線がすっぽり入るくらい広い。1972年に科学技術庁無機材質研究所が移転第1号だった。1973年には筑波大学が開学し、約40年が経過した。43機関(現在は統廃合で31機関)の移転がほぼ終了した1985年には、つくば科学万博が開催され交通網や宿泊施設なども充実した。この学園都市は、長らく陸の孤島に近かった。万博が開催されるまでの交通手段は、JR常磐線しかなく、つくばの中心からバスで約10kmのJR土浦駅や荒川沖駅へ出ないと東京まで行けなかった。つくば万博に合わせ常磐高速道路が開通しその後、東京駅とつくばセンター間の高速バスができ便利になった。しかし東京での午前の会議では道路の渋滞で高速バスの時間が読めず、JRを使用する場合が多かった。羽田・成田空港への直通バスも出来、国内外へのアクセスはとても良い。そして2005年につくばエキスプレス(TX)が開通した。TXは、新規に造った路線で高架と地下でつながれ踏切がない構造となっている。速度は、踏切がないのでいくらでも出せそうだが、JRの在来線の最高速度である時速130kmで、つくばと秋葉原を45分で結んでいる。

大澤 嘉昭

つくばの中心部(標高25m)から見た筑波山(標高877m)
左が男山,右が女山

 つくば学園都市は、もともと不毛の地で表面に1m足らずの関東ローム層の土があるが、その下は厚い常総粘土層がある。これは、ビニールを敷いた上に土があるように、起伏の高いところは乾いた大地、低いところは沼や湿地となり作物の生育が悪く、人口も少ない土地だったそうだ。そのためこの広大なところへ人工都市を造った。人工都市のため、中心部に職住接近として住宅街が多く存在する。また、南北を中心に総延長48kmものペデストリアンデッキという遊歩道(歩行者・自転車道路)が整備されている。この遊歩道沿いには12カ所に及ぶ大きな公園や商業地域が有り学園都市の要となっている。人口あたりの公園面積は日本でもトップと思われる。緑も豊かで、公園はもとより幹線道路の街路樹も四季を通して楽しませてくれる。特に遊歩道の桜並木や街路樹の紅葉はすばらしい。ここを散策するだけで、気分は爽快だ。

大澤 嘉昭   大澤 嘉昭
ペデストリアンデッキ(遊歩道)の
桜並木(4月上旬)
  11月中旬頃のつくばの紅葉
(中央の公園の周りはポプラの樹)
 
科学技術週間での鋳鉄鋳造実験
溶解炉を傾動し取鍋へ注湯中

 

ベーゴマ

 

 毎年4月中旬の科学技術週間に、つくばの研究所の多くは一般公開を開催している。その日はTXつくば駅からも一般公開用の無料送迎循環バスが出ている。物質・材料研究機構ではその一般公開のほかに、次の日曜日に青少年向けの特別企画の行事も行っている。我々も鋳鉄の溶解鋳造実験を行い文鎮などの鋳物を作製した。これは日本鋳造工学会の関東支部の鋳物体験教室とも連携している。実験の見学記念に子供のいる家族にはベーゴマを進呈し、そこで楽しんでいただいた。実際には、ベーゴマを見たことのない子供より付き添いできたお年寄りにすごく上手な方が多くいる。この企画も年々参加者が増加し2012年は約1000人が訪れ大盛況となった。
科学週間以外でも、各研究機関では広報室に連絡すれば何時でも見学は可能である。なお、何時でも有料で見学出来る場所は、以下のようなところがある。

国立科学博物館の筑波実験植物園 http://www.tbg.kahaku.go.jp/
入園料:大人一般300円
つくば駅(つくばセンター)からテクノパーク大穂行き(5番乗り場)
→「筑波実験植物園前」下車(片道約10分,160円)→徒歩3分

地質標本館((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)http://www.gsj.jp/Muse/
入館料:無料

つくばエキスポセンターhttp://www.expocenter.or.jp/
つくば駅から徒歩約5分
入館料:大人一般400円(プラネタリウムと合わせ大人一般800円)

 

皆さんも是非つくば研究学園都市に見学に訪れて下さい。