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リレーエッセイ

異なる研究室で学ぶ

東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 材料物理科学専攻
博士後期課程3年 熊井研究室 中村 亮司

鈴木 理恵 氏 私は、アルミニウム合金クラッド板作製用双ロールキャスターの研究を始めて、今年で6年目になります。最初の3年間は大阪工業大学で羽賀先生の教えの下、機械工学について勉強し、その後、東京工業大学に入学し、現在は熊井先生の教えの下、金属材料を学んでいます。

 学部4年生のとき、ものづくりに興味があり、設計・製作系の材料加工(羽賀)研究室に入りました。研究室に所属して最初の仕事は、ゼロからの装置の設計、製作でした。設計に関して、羽賀先生に指示されたことは「大学のエレベータに乗ること」、「実験室の天井の高さの制限」だけでした。羽賀研究室には、あらゆるタイプのロールキャスターが数台あったこともあり、約3カ月で設計を終え、自分で製作を開始しました。毎日、鋼材を切り、図面を見ながら100個以上の穴あけやフライス加工、旋盤加工をする日々でした。設計を始めて約半年で世界に一つしかない装置ができあがりました。羽賀研究室で修士課程進学後、この装置を用いて作製したアルミニウム合金クラッド材の研究成果を、学会の講演大会で発表してきました。学会活動では、凝固組織についての質問などを多くいただいたこともあり、凝固組織に興味を持ち始めました。

 熊井先生と初めて会ったのも学会でした。この出会い、私の凝固組織への興味、双ロールキャスターを通じた羽賀先生と熊井先生のつながりもあって、私は東京工業大学に博士課程の学生として入学することになりました。熊井研究室に所属して感じたことは、研究室が違うと試験片の研磨から観察方法まで、研究の進め方が多くの点で違うことでした。このような違いで困惑していた私に、熊井先生は「顕微鏡を通じて材料と会話をするんだよ。」と言ってくれました。この一言により組織の見方が変わり、初晶の核生成がどこで始まり、成長したかなど組織観察が楽しくなりました。

 最後に専攻が変わったり、研究室が変わったりすることは、生活環境が変化し、自分への負担が大きくなるように感じますが、異なる先生や同僚から得られる知識量は非常に多く、深く広く研究を行うためには必要不可欠であると思っています。