会員向け情報
原因は硫化鉄?
他支部会員からの便り
他支部会員のKFさんからハッとする様なお便りを戴きました。グリーン調達の副産物のようです。環境負荷物質についての規制は、製造業が今後とも注目せざるを得ないテーマのようです。
「原因は硫化鉄?」
今日、環境負荷物質に関する話題が多く、国内ではグリーン調達、海外との関係ではRoHS(ローズ) (Restriction of the use of the certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment: 電気電子機器の特定有害物質使用規制)やREACH(EU新化学物質規制)など色々である。 客先要求で環境負荷物質調査のため鉛(Pb)、カドニウム(Cd)、水銀(Hg)、六価クロムなど含めた原材料の化学成分を調査した。結果、現在使用中の加硫材にかなり高い砒素(As)と鉛(Pb)が含有していることが 分かった(下表)。 昔は同じ硫化鉄鉱(FeS2:天産品)でもこれらの低いものがあったが、今出回っている輸入品は、鉱脈の関係でばらつきが多く今回のような結果になっているようだ。 今のところは、国内で人工的に作られている硫化鉄(FeS:か表参照)に換えるのが最善のようである。
加硫材の名称 | S(硫 黄) | 元素 | |||
理 論 値 | 分 析 値 | As(砒素) | Pb(鉛) | Sb(アンチモン) | |
硫 化 鉄 鉱 (FeS2) |
53.40% | 25~44% | 0.256% | 0.038% | 検出されず |
2,560ppm | 380ppm | ||||
硫 化 鉄 (FeS) |
36.40% | 25.48% | 検出されず | 0.0013 | 検出されず |
13ppm |
<訂正とお詫び>
昨年掲載の「会員向け情報」の「会員便り」で、タイトル「原因は硫化鉄?」を読まれた方から以下のご指摘がありました.。「硫化鉄(FeS)の分析で,Pbが0.013%(130PPM)となっているが,分析しても殆ど出てこないのですが」とのこと。当時の原稿で確認すると一桁違う、0.0013%(13ppm)が正しい分析値でした。お詫びして訂正いたまたのでご確認願います。
話は変わるが、十分な残留Mg%なのに黒鉛形状が崩れたり、基地に異常組織が発生することが時々 あり、そのたびに製品の分析などで原因を追及してきたが、つかめずに今日に至っている。今回の調査で 加硫に使っている硫化鉄鉱(FeS2)に砒素や鉛がかなり含有しているのでこれの元素の悪影響と考えると 辻褄が合う。砒素と鉛は球状化阻害元素であり、文献等で調べた悪影響を以下にまとめた。
※砒素(As) | 内部に部分的チルを発生させ、加工不良などの問題を起こす。また、内部に引け巣の危険性を助長させる。黒鉛球状化阻害作用がある。 また砒素は沸点(約600℃)が低いので溶湯中に溶解する際に一部ガスを放出 して作業環境を汚染する。さらに、炉壁の耐火材に残存するとも言われ(ミラー反応)炉修迄、悪影響が残る。など |
※鉛(Pb) | 黒鉛球状化阻害元素の一つ、ウイッドマンステッテンと呼ばれる独特の黒鉛を発生させる。など |
Aは中央に球状黒鉛から芽が出た様な黒鉛組織が観察される。
Bは白い板状の組織が見られる。
これらは,共に砒素の影響と思われる。
Cは球状が崩れたずれたCV状黒鉛で、黒鉛の輪郭が乱れている。
Dは典型的ウイッドマンステッテン黒鉛と思われる。
これらは,鉛の影響と考えられる。