会員向け情報

鋳物用語解体新書

ずんべ

 押湯を効かすため押湯または揚がりの表面に皮が張らない(表面開放部が固まらない)ように押湯や揚がりに棒を入れて凝固するまで搗くこと。搗く棒を「ずんべ棒」と呼んでいた。また、「図解鋳造用語辞典、日本鋳造工学会編」では、「ずんべ」を「押湯表面に凝固皮膜が張ると大気圧分だけ押湯効果が減る。これ を防ぐため、押湯を棒で突つき、凝固皮膜が張らないようにすること。」と説明されています。

 今日、「ずんべ」は発熱剤や発熱・保温スリーブに置換わっているが、ずんべのコア技術は受け継がれている。これにより、押湯の効果(引け巣を低減させるための大気圧や押湯有効高さによる加圧と熔湯収縮量の補給)を最大限引き出すことができる。

 より小さな押湯や押湯無し方案で引け巣の無い(健全な)鋳物を造ることは永遠のテーマで、それゆえに化学組成や熔湯処理技術の研究、加えて今は凝固や湯流れシミュレーションの研究が盛んの行われる所以である。100kg鋳込んで100kgの製品を造りたいものである。

 同じ用語辞典で、「押湯riser;feeder」を引くと、「・・・・・押湯設計の基本は押湯の凝固を鋳物部より遅らせることである。熔湯が鋳込まれから、凝固するまでの時間は、(V/A)2にほぼ比例する:Vは鋳物の体積(cm3)、Aは表面積(cm2):。したがって、

押湯のV/A 鋳物のV/A

となるよう設計すればよい。しかし押湯のV/Aをむやみに大きくすることは、安全ではあるが(引け巣をとめるのに)、(鋳造)歩留を低くする(原価が上がる)。

押湯のV/A=k*鋳物のV/A

とおいて、k=1.1~1.2くらいにとるのが良いとされている。またこのkを合理的に定めた実験式もいくつかある。」と説明されています。

註1)V/Aの事を「モジュラス:M」と呼ぶ。  註2)文中の( )内は、筆者の補足

 以上、「ずんべ」を調べると「押湯効果」、「引け巣対策」、「鋳造方案の設計」、「鋳造歩留」から「原価」まで鋳造の原点に触れる事ができた。でもまだまだ入り口、鋳造技術の奥は深い。

(2009年3月)