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鋳物用語解体新書

「いもの」の「鋳」

 とある方に、“ルツボ(坩堝)”の語源がよくわからないと言われて気になっていたが、「語源由来辞典」というものがインターネット上にあることを知り開いてみた。それによると<坩堝は、「いるつぼ(鋳る壺)」の略、もしくは「ろつぼ(炉壺)」が転じた語と考えられる。>とある。個人的には「炉壷」は「鋳る壷」のほうが鋳込みを想像でき、もっともらしく思える。

 「鋳る壷」だとして、なじみ深い漢字の「鋳」はどこからきたのか?つくりの寿(壽)は耕した畠を意味し豊穣を祈る字であるらしい。豊穣と言えば稲作が関係する。稲のつくりの部分は「爪+臼」で臼に米を入れて手先でまんべんなくつくことを意味する。これを意味する漢字が「搯 (とう)」で、足でつくと「蹈 (とう)」になる。陶器をつくる時も型の中に陶土をいれ隅々まで押し込む作業がある。この動作が臼の中で餅米をつく動作と同じであり、陶器の場合は「掏 (とう)」と言うらしい。鋳物をつくる場合も同様に融かした金属を隅々まで行き渡らせる動作を行い。これを「擣(とう)」と言う。ここから、「鑄」という字ができたという。共通の動作として、搗いて餅をつくる動作が根底にあるようである。採鉄・採鉱作業が土を耕す動作と同じであることからも、鋳造作業のルーツは稲作にあると言ってよいのではなかろうか。

(2009年6月)