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鋳物用語解体新書

あんこ

 大福もち、饅頭、アンパンの餡や「おはぎ」、「牡丹餅」をイメージするのだが、昭和32年9月30日発行の「鋳物用語辞典」によると「あんこ」は、「鋳包み」と同じ意味で、同質または他の材質のものを鋳物に入れて熔着させること(insert)または、 厚肉部の冷却を早め、不良防止のために鋳物内部から冷却する方法(internal chill)とある。

 鋳物の場合中に包み込まれると言う意味で「おはぎ、ぼたもち、あんかけ」のあんのイメージは無い.現場の職人さん達が「あんこ」と呼びそれが受け継がれてきたわけだ。今から半世紀前に発行の辞書にあるのだから、朝鮮半島からの渡来人により伝わり今日に至る鋳物の歴史のなかで、「あんこ」が現場で定着するまでにかかった時間を考えれば、厚肉鋳物の内部の冷却を早め健全な鋳物作る工夫が行われたのは遠い昔からの事であろう。不良対策がどうこう考える前に作れなければそれに値しない者としての罰を受ける時代、教科書の無い時代に「あんこ」の技術が使われていた事に感心し、先人の苦労と英知に感謝するしだいです。

 英語では、「insert」、「internal chill」とそのものずばり、また「餡」もbean pasteとやはり即物的である。「あんこ」の食文化が無かった欧米では日本人のこのような発想は出来なかったのだろう。と納得してこの話題を「お開き」にします。(H.K)

 このカテゴリもこれで13回目になります。これからの続けていくのですが、これまでの内容に「こんな謂れもある」、「私はこう考える」などのご意見や全く新しい用語の解釈があれば広報までお寄せ願います。(FAX:03-3437-1906 鹿毛まで)

(2009年8月)