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鋳物用語解体新書

「揚り」と「押し湯」

「揚り(あがり)、上がり:strain relief,flow off,pop off」と「押し湯:head,feeder head,riser」

 「一丁揚り」、「ものが出来上がること」、「物事が一段落する事」、「病み上がり」,「雨上がり」などと同じ意味合いで使われたのだろう。一義的には、鋳型を一杯に満たした状態を確認する。「注湯終了=上がり」といった所か。英語の strainには「強く引張る」だけでなく「強い圧力をかける」の意がある。続くreliefは「除去,軽減」である。鋳込まれた溶湯が鋳型空隙(キャビティ)に流入し、そこにある空気や鋳型から発生したガスを押しのけ置換する。この時、空気と空隙内のガスは圧縮される。これらが容易に抜けるように(圧がかからないように)つけた縦穴が「揚り」である。「揚り」とは、上部は開放され、鋳型空隙のガスを抜く役割をも持つ。これは、鋳型空隙のガス抜きと取付けた部分の凝固速度の調整を目的として垂直に取付けられた開放穴である。
 「押し湯」は、辞書によれば:“「揚り」が溶湯に圧を掛けるだけでなく鋳物の凝固収縮分を補給する場合に、これを特に「押湯」という”とある。これにより、加圧状態で溶湯補給されながら凝固する鋳物は、引けの少ない緻密なものになる。

以上、鋳型技術の工夫・進化が窺える2つの鋳物用語である。

 

(H.K)
(2011年11月)