誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

砂型

旭有機材工業(株) 奥山 賢一郎
6 有機自硬性鋳型について(その1)

6.1 自硬性鋳型の分類

 一般的に自硬性鋳型とは、造型後に外部からの加熱や触媒ガス通気などを行わず常温で放置硬化させる造型方法及び鋳型を指す。自硬性鋳型は図6.1のように有機自硬性鋳型と無機自硬性鋳型に分類される。

RCSの製造工程

図6.1 自硬性鋳型の分類

 1970年代のオイルショック以降、それまで主体であった水ガラス系の無機自硬性鋳型に変わり、有機自硬性鋳型の導入が進んだ。現在国内では非量産型鋳造工場をはじめ、広範囲の鋳造工場で適用され、その用途に合せて種々の有機自硬性鋳型が採用されている。中でも国内ではフラン自硬性鋳型、アルカリフェノール自硬性鋳型、フェノールウレタン自硬性鋳型などが多く使用されている。

6.2 フラン自硬性鋳型

(1) フラン自硬性鋳型の概要
 国内で最も多く採用されている有機自硬性鋳型である。フラン樹脂(フルフリルアルコール、尿素、フェノール、ホルムアルデヒドなど)と硬化剤(有機スルホン酸)の反応により脱水縮合して硬化するシステムである。
表6.1に示すように、樹脂の種類や成分は用途によって異なり、特に鋳鋼分野では、窒素分の影響を小さくするために、フルフリルアルコール分が90%以上のフラン樹脂や、窒素レスかつ高耐熱性が特徴であるフェノールフラン樹脂が使用される。硬化剤は主成分となる有機スルホン酸の他、硫酸、水などを含む混合溶液として各種グレードが用意されており、硬化速度は一般的に有機スルホン酸の濃度により決定される。硬化剤は目的の造型条件に合う速度のグレードを適宜選定して使用し、単独または、速度の異なる二種のグレードを任意の比率で自由に混合して使用する。

表6.1 フラン樹脂の特性*2
  FA/UF
(尿素フラン樹脂)
FA/PF
(フェノールフラン樹脂)
フルフリルアルコール分 ←90%→ ←80%→ ←65%→ ←70%→
尿素樹脂分 ←10%→ ←20%→ ←35%→ ←0%→
窒素分 1~2% 3~4% 5~7% 0%
主用途 鋳鋼再生用
鋳鉄再生用
アルミ再生用
鋳鉄再生用
アルミ再生用
鋳鉄新砂用
その他
鋳鋼再生用
FA/UF:フルフリルアルコール尿素ホルムアルデヒド樹脂
FA/PF:フルフリルアルコールフェノールホルムアルデヒド樹脂

 通常、フラン自硬性鋳型では再生砂が使用され、95%以上の歩留まりで回収、再生されている。また、フラン自硬性鋳型は有機自硬性鋳型の中では最も少ない添加量で高い強度を得られる造型法であり、樹脂添加量は、粒形の良い新砂では砂に対して0.7~0.9%程度、再生砂に対しては0.6~0.8%程度である。

(2)フラン自硬性鋳型の利点と欠点

利点
  • 樹脂粘性が低く樹脂添加量も少ないため、混練砂の流動性が良く型込めが容易である。
  • 可使時間、抜型時間の設定自由度が高く、鋳型サイズ、形状の適用範囲が広い。
  • なりより性が少なく、寸法精度のよい鋳型ができる。
  • 残留強度が低く、崩壊性が良い。
  • 砂の再生性が良く、95%以上の歩留まりが達成できる。
  • 鋳型の表面安定性が高く、鋳肌がきれいである。

欠点
  • 砂中の粘土分、微粉分、アルカリ分などにより硬化速度が影響を受けやすい。
  • 気温、砂温、湿度などの造型条件により硬化速度、鋳型強度が影響を受けやすい。
  • なりより性(鋳型が鋳物と共に収縮する特性で、鋳込んだ溶湯の凝固の際の収縮膨張に耐えうる鋳型の性能を指す*3)が少なく、薄肉鋳鋼品で熱間亀裂を発生しやすい。
  • ダクタイル鋳鉄で球状化阻害が起きやすい。
  • 注湯時に発生する二酸化硫黄により作業環境の悪化が懸念される。

参考文献
財団法人 素形材センター「鋳型の生産技術(第2版)」(2002) 
社団法人 日本鋳造技術協会「第4版 鋳型造型法」(1996) 
   
引用文献
1)財団法人 素形材センター;「鋳型の生産技術(第2版)」(2002),p284
2)財団法人 素形材センター;「鋳型の生産技術(第2版)」(2002),p287
3)(社)日本鋳造工学会編;「図解鋳造用語辞典 初版」日刊工業新聞社発行(1995), p148