誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

セミソリッドダイカスト

第1回「セミソリッドダイカストの概要」
(株)東京理化工業所 菊池政男

はじめに
  ダイカスト法は金属製鋳型に溶融金属を加圧注入する鋳造方法である。長い鋳造歴史の中で、鋳造ごと型を壊す砂型に対し、繰り返し使用できる金型の出現は大きな変革であった。金型は寸法精度、鋳肌が良い反面、冷却速度が速いため湯廻りが悪い欠点があった。これを解決するため溶融金属を加圧し金型へ高速注入したのがダイカストである。図1)にダイカストの大きな変遷を示す。

  高圧高速充填のためダイカストには空気の巻き込みによる鋳巣が内在し熱処理ができず、機械的強度に対する信頼性に欠けるとされていた。しかし、それでは用途に限界があり、鋳巣対策として多くの技術対応がなされた。 ダイカストの技術の歴史は鋳巣との戦いであり、ダイカストの特徴である高速充填の反省を含む多くの対応が試みられた。

これら技術開発は真空ダイカスト法、層流ダイカスト法、PFダイカスト法などである。しかし、これらは溶湯充填の限界、高融点金属に対する課題などの問題がある。

それに対し、溶融金属ではなくセミソリッド状態にてダイカストする方法が。セミソリッドダイカストである。これは金属を固液共存領域で射出充填する方法であり、従来の溶融ダイカスト法と比べて空気巻き込みによる鋳巣だけでなく、これまで対応が難しかった凝固収縮による引け巣及び偏析が極めて少なく、低温鋳込みのため金型寿命が向上するなどの特徴を持っている。

セミソリッドダイカストについて
 セミソリッド状金属とは図2)に示すように、液相と固相が混在した状態のことをいう。この状態を得る方法は多数あるが、典型的な例を図3)に示す。図中の攪拌棒で溶湯を攪拌しながら凝固させ、発生した初晶デンドライトを破壊して、溶湯中に固相粒子として分散させることで得ることができる。したがって、冷却速度及び攪拌速度及び冷却と攪拌の程度により、固相粒子の大きさ及び固相率が異なる。これは平衡状態図の固液共存領域で行われ、固相線温度と液相線温度の差が大きい合金ほど、セミソリッド状態を作ることが容易である。

  図3に示す方法で溶湯の温度を低下させ、凝固過程で固相と液相が混在した状態を一般的には半凝固状金属という。また、この様にして得られた半凝固状金属を、急冷凝固させた材料を再度加熱して再び固相と液相が混在した状態とする。これを半溶融状金属と呼び、半凝固状金属と区分けしている。半凝固状にする方法として、機械的攪拌法、電磁攪拌法、機械的振動法、超音波振動法などがあり、半溶融状にする方法として電磁加熱法などがある。

 セミソリッド状金属での工業化が進んでいるのがアルミニウム合金によるダイカストの分野である。セミソリッドダイカストには2つの方法がある。1つは図4)に示すレオキャスト法(Rheocasting)という方法である。この方法は、攪拌凝固により得られた半凝固状金属を、そのままダイカストマシンのスリーブに滴下し、射出成形する方法である。もう1つはチクソキャスト法(Thixocasting)と呼ばれる方法で、この方法を図5)に示す。この方法は攪拌凝固により得られた連鋳棒を必要量切断し、再加熱により再び半溶融状金属にしたものを、ダイカストマシンのスリーブに挿入射出成形する方法である。

 セミソリッドダイカストは表1)に示す特徴を持っている。この中で、低い鋳造温度、小さい凝固潜熱による金型寿命向上は、高融点金属ダイカストの可能性を示唆しており、また、鋳巣の低減はセミソリッドダイカストの主目標である。

 セミソリッドでの流動は図6)に示すように、固相粒子が充填中独立した状態で移動回転するため流動に対する抵抗が少なく、変形に必要な加圧さえかかっていれば流動性を維持できるためである。

参考文献
1)菊池 政男:「会報ダイカスト」No115、(2002)、P27
2)木内  学:「半溶融・半凝固加工技術の現状と将来」生産研究、Vol42、No6、(1990)、P23
3)素形材センター:「ダイカスト金型」、(2001)、P453~454
4)菊池 政男:アルトピア12月号、(1996)、P11