誰でも分かる技術
セミソリッドダイカスト
第4回「製品の特徴」
セミソリッド状金属を加工する方法としてダイカストの他に鍛造、圧延、押出などが考えられるが、一番実用化が進んでいるのがセミソリッドダイカストである。 セミソリッドダイカストの特徴は、鋳巣が少なく、事前に組織制御されており、全体的に組織が均一であり、固液共存領域での低温鋳込みにより金型寿命向上、鋳ばり発生が少ないなどである。結果として良好な気密性、ばらつきの小さい良好な機械的性質、熱処理、溶接可などを得ることができる。(第1回「セミソリッドの概要」表1参照) また、以下に項目別に具体的な特徴を記す。
(1) 凝固組織
図1にAC4CHで作られたセミソリッドダイカスト(半凝固、半溶融)とスクイズダイカストの組織を示す。溶湯ダイカストの中で鋳巣の少ないスクイズダイカストはほとんど樹脂状晶で構成されているのに対し、セミソリッドダイカストは50~100μmの粒状の初晶αを共晶でつつみ込む組織である。組織中、半溶融ダイカストのα晶中に黒く見えるのは、チクソビレットを再加熱し、半溶融状にする過程で結晶成長する際にα晶に取り込まれた共晶部である。
セミソリッドダイカストの組織は、肉厚により差はなく、内部から表面までほぼ均一である。ただし、図2に示すように鋳肌表面は溶湯ダイカストで見られる微細なチル層はなく、金型への充填完了時の加圧効果による液相の浸み出しによると考えられる共晶部でおおわれている。
(2) 鋳巣およびガス量
ブローホールについては、スクイズダイカストと同様な層流充填すること、高粘性の充填によりほぼ防止できる。また引け巣については、大きなものはほとんど見られない。したがって、溶湯ダイカストと比較すると非常に少ない。製品に含まれるガス量は、製品により差があるが、0.3~1.0cc/100gと非常に少なく、当然、熱処理、溶接が可能である。図3にガス量測定の事例を示す。
(3)機械的強度
図4にセミソリッドダイカスト(半凝固、半溶融)と他の製法との強度比較を示す。(すべてAC4CH材で成形したものをT6処理) 図でわかるように引張強さ、耐力で大きな差は見られないが、セミソリッドダイカストは伸び率が大きいことがわかる。これは、粒状の結晶組織および共晶Siの微細化によるものと考えられる。
(4) 量産製品事例
以下に、実際に量産されている製品事例を示す。
①自転車部品
図5は、自転車の一部に使われ、両側にペダルが付く部品である。この部品は従来2つの鋳造品をパイプでつなぐ3つの部品からなっていた。その部品をセミソリッドダイカスト法で一体成形したものである。
②油圧部品、気密部品
図6は、油圧部品である。この部品は従来、鋳鉄で作られていたが、アルミニウム合金でセミソリッドダイカスト法で鋳造することにより、軽量化、気密性の向上、切削加工工数の削減を実現することができた。
③2輪強度部品、4輪ディーゼルエンジンブロック
図7は、欧州車に使われている自動車部品をセミソリッドダイカスト法で鋳造したものである。
まとめ
以上、4回に分けてセミソリッドダイカストについて述べたが、セミソリッドダイカストはこれまでの溶湯ダイカストと比べて多くの利点を持っている。また、セミソリッドダイカストはアルミニウム合金だけでなく、鉄、銅その他多くの金属にて可能であり、無限の可能性を持った方法と考えられる。皆様も、ダイカストに限定することなく、その他の金属加工法の領域、多くの合金系でその可能性を試されることを期待します。今回の掲載がその一助となれば幸いである。