誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

銅合金鋳物の材質と基礎知識

3-1 「銅合金鋳物とは」
東京大学名誉教授・チュラロンコン大学客員教授 梅田高照

1. 2 合金の基礎と凝固過程

1. 1 種類と特徴

 人類が金属材料を道具に初めて使ったのが銅合金です。銅に錫、鉛、亜鉛あるいは砒素などが含まれた青銅鋳物は比較的低融点で、溶解が当時の燃料でできたこと、耐火物も十分対応できたことの付帯条件と共に、鋳造性が良く、形状を作りやすいことから、種々の生産道具としてまた権力者の祭祀用具として広く長く使われてきました。やがて生産用具は鉄鋼材料に替わり鉄器時代が始まります。また、砲金の名の如く、10%程度の錫と亜鉛を含む銅合金鋳物は近世まで大砲に使われていました。これらの自然に発生してきた合金で生産器具から武器まで作っておりました。これらは作りやすいばかりでなく使われ勝手が良いこともあって、近・現代の金属知識で改良され、現在も広く使われております。銅合金鋳物はこのように古いルートを持っておりますが、他の鉄鋼材料・アルミニウム材料などと比べ高価であり、競争に打ち勝つために下に述べる独特の特徴を有する合金を開発し、どっこい現在に生き残り発展を遂げております。




 銅合金鋳物の特徴として、 ①電気伝導・熱伝導が良い、②適度な強度を有している、③耐圧性が優れている、④耐食性が優れている、⑤耐摩耗性が優れている、⑥軸受特性が優れている、⑦美麗である、などの特徴を有し、これらの諸特性を活用し使用されています。表1に示す各種銅合金鋳物はこれらの特徴を具現して活用されています。たとえば銅合金鋳物の生産量の過半を占める青銅系鋳物(CAC400)は水に対する耐食性が良く、被削性も良く、複雑な形状の耐圧鋳物をつくりやすいので、バルブ類,給水器具類に最も適した合金です(写真1 水道メータ)。また、耐食性特に海水に対し優れたアルミニウム青銅は、銅合金鋳物の中で最も強靭で、厚肉になっても強度低下が少なく、舶用推進器として、ボートレース用から,製品重量80トンに及ぶ大型タンカー用プロペラなどに使用されています(写真2)。写真3に製鉄機械用羽口を示し、純銅の持つ熱伝導の良さから高炉の冷却部品・羽口に使われています。又,近年,電気エネルギー消費の過半を占めるモータの省エネルギーのために、高効率モータ用に純銅ダイカストによる銅ロータの開発が欧米では進んでおり,我が日本においても電機業界から熱望されています。写真4に軸受ブッシュを示します。軸を安全に稼働させるために軸とのなじみ性が良い鉛入り青銅鋳物が使われています。上述の特徴を生かして使われ方が理解できます。尚, 銅合金の原材料は、他の鉄系・アルミ系材料と比較して高価であるため,古くから「あか」屋と呼ばれる回収業によるリサイクルシステムが完備されており,銅合金鋳物が総合力で勝ち残っているのです。

次回は合金から見た特徴を述べて参ります。