誰でも分かる技術
生型(その1)
1.生型の基礎
生型は砂とベントナイト,その他の添加剤などで構成されています。
砂粒間の結合はこのベントナイトに水を加えることで発揮する粘結力を利用します。
鋳型は造型された後、溶湯が鋳込まれることから溶湯圧及び溶湯温度に十分耐えなければなりません。この鋳型の条件を充たすにはその成型方法と使用する生型砂の性状を適正に整える必要があります。自硬性鋳型の場合においては、混練した砂は多少湿潤状態にあっても粘結剤に結合力はほとんどないことから、砂の流動性を阻害することは少なく砂の充填は比較的容易です。これに比べ生型砂を充填する場合、砂の粘結剤であるベントナイトは混練された状態で既に十分な粘結力を有しており、砂の流動性を低下して充填性を悪くします。従って生型の場合、他の鋳型と異なり造型時には砂の充填に大きな外力を加える必要があります。
それでは先に、鋳型に要求される条件を考えてみましょう。
生型鋳型の条件
鋳型としては次のような諸性質を満足する必要があります。
- 適度な強度を有すること
造型された鋳型は運搬されるとともにその中に溶湯が鋳込まれるため、その際にかかる外力に十分耐える強度が必要になります。鋳型の強さは,砂粒の形状や粒度構成なども影響しますが,主にベントナイトの種類や添加量そして造型方法などが大きく作用します。図1は,鋳型強度に及ぼすベントナイト添加量と水分の影響について示したものです。
添加量を2~10%に増やせば強度があがりますが,水分の増加に伴い最大を示した後,減少することが分かります。一般的な鋳鉄品の場合,ベントナイトの添加量は6~8%程度(経験的にも)が良いとされています。これは,生砂型に要求される強度が0.8㎏/cm2前後なので,図のベントナイト添加量と水分の関係を一つの目安とすることが出来ます。さらに解枠時には適度に崩壊する強度であることから由来します。
図1 湿態圧縮強さに及ぼすベントナイト添加量と水分との関係図2は造型方法の違いにより強度に及ぼす影響を、かたさで推定したものです。手込めは砂を少しづつ投入しながら木槌やスタンプなどで付き固める方法です。適度な硬さが得られ比較的均一に充填されます。ジョルトは砂を投入し小刻みな上下振動を加えます。ジョルトのみでは模型表面は硬くなりますが模型から遠い背面は硬くなりません。この背面に加圧することをスクイズといいます。スクイズを付加することで背面も硬くなります。鋳型は均一に充填することが重要ですが、機械化することで模型面,背面とその中間のアンバランスが課題となり、これを改善するために多くの造型機が開発されています。
図2 造型法の違いによる生型かたさの推定比較 - 適度な通気性を有すること
鋳型は溶湯が鋳込まれると、粘結材,添加剤,水分などの熱分解により相当量のガスを発生します。また溶湯も温度低下及びその凝固のさいにガスを発生します。
これらのガスを逃がすために必要な通気性を有しなければなりません。一方、通気性が高すぎると鋳型の背圧が溶湯圧よりも小さくなり鋳肌が粗くなります。 - 適当な熱間性質を有すること
溶湯の熱に対して鋳型に要求されるのは,熱間強さ,熱間膨張熱間変形量などの諸性質で,これらが適当な範囲にない場合には欠陥が生じることなります。また鋳型に使用する砂のSiO2純度が低い場合には、耐熱性が劣り化学的焼付きを生じます。 - 残留強さが低いこと
造型時には適度な強さが必要ですが鋳込み後、解枠時には崩壊しやすく製品の砂落とし作業が容易な砂(残留強さが低い砂)が要求されます。また、繰り返し使用される砂は玉にならず簡単に篩い分けられる性質が要求されます。
次に、鋳型を構成する砂に要求される条件を考えてみましょう。
生型砂の条件
- 生型砂は十分な成型性を有すること
鋳型を作る場合には生型砂を模型上で突き固めまたは外力を加えて成型します。この成型性は砂粒子,粘結材および水分などの条件によって決まります。 - 砂粒は適度な粒度分布を有し粒形は丸形に近いものであること
砂粒は生型砂の中の約90%を占め、その良否は鋳型に大きな影響を及ぼします。従って、造型性(充填性)を害さずに通気性もあまり低下させない粒度分布および粒形を有することが必要です。 - 砂粒は適当な化学組成及び物理的性質を有すること
生型砂で最も多く用いられているのは,けい砂で,その主成分はSiO 2でその他にAl2O3,Fe2O3などが含まれています。一般的にSiO2%の高いほうが望ましいとされており,鋳鉄より高い耐火度が要求される鋳鋼では97%SiO2以上のものが要求され、鋳鉄用では80%SiO2以上のものが使用されています。
SiO2には多くの熱変態があり特にα石英が加熱によりβ石英になる場合(573℃)を図3に示すような大きな膨張があることを十分考慮して造型する必要があります。この変態は可逆的でありこの温度を通過するたびに何度でも繰り返されます。この対策として澱粉や石炭粉が有効とされ,多くの鋳物工場で使われています。
図3 シリカ(SiO2)の線膨張率 - 粘結材は造型時強い粘結力を有し溶湯鋳込み後は粘結力が低下するもの
この相反する性質を満足するものはありませんが、水を添加調整するだけで反復使用できることから、生型砂の粘結材としては一般的にベントナイトが用いられています。 - 今回は鋳型に要求される条件と砂に要求される条件について考えてみました。次回は、生型に使用される砂、ベントナイト、など各種材料の特性やその使用方法などについてお話します。