誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

生型(その1)

2.生型に使用される材料
アイメタルテクノジー㈱  佐藤和則

 生型砂の一般的構成材料は、骨材としての「けい砂」、粘結材の「ベントナイト」、添加剤の「澱粉・石炭粉」などで、これに水を加えて混練し造型に適した砂に調整されます。

けい砂

 けい砂とは二酸化けい素(SiO2)を多量に含有する砂粒子状のけい石をいいます。けい石は石英を指し石英分の多い岩石までを総称しています。石英は地球上に最も多く存在する鉱物で地殻の60%を占めており、石英の純粋な結晶は水晶で代表されます水晶の形で存在するのはごくわずかです。
 けい砂は天然に産し、優れた耐熱性を有する比較的入手が容易なものなので、鋳物作りに古くから使用されて来ました。鋳型に使用される砂を大きく分類すると山砂,けい砂,特殊砂の三種類に分類されます。「山砂」は,天然に産した状態で粘結力があり、適度の水を加えるだけで使用できるが、近年は、使用者が個々に調整できる合成砂(システムサンド)の普及し、さらにシェルモールド型などのように有機粘結剤を使用する自硬化性鋳型の発達により山砂は使用されなくなりました。
 「けい砂」は砂粒状で採掘されままで利用する場合もありますが、最近では水洗や粒度調整および浮遊鉱選などをして用いられています。これを「天然けい砂」と呼び,石英結晶が密着固結した「けい岩」または「粗粒のけい砂」を人工的に破砕して砂粒子状に加工した「人造けい砂」と区別します。
 「特殊砂」としてはオリビンサンド、クロマイトサンド、ジルコンサンドおよびアルミナサンドなどがあります。最近はセラミック系の人工けい砂が製造され目的の鋳型に併せて使用されています。
 けい砂を構成する主な鉱物は、石英,長石および雲母の三種類です。石英リッチな原鉱は地殻を構成する地層の火成岩中に最も多く、自然の流水あるいは風力の作用によって砂層の堆積などが進み国内各地に産出します。けい砂の主成分である石英の含有量と生成条件さらに不純物の混入量によってその物理的性質は多少異なります。

表1 代表的なけい砂の化学成分と強熱減量特性

表1 代表的なけい砂の化学成分と強熱減量特性

 生型ラインへのけい砂の補給は、新砂,再生砂,中子砂などとして補給されます。最近は環境問題から廃棄物を最小限にするために新砂補給を極力少なくして、再生砂や中子砂から補給することが多くなってきています。再生は自工場で行う場合もありますが、多くは専門の再生工場に委託し再利用を図っています。生型への補給は主として中子から補給される場合が多く、けい砂の種類の選択は多くの場合、中子に使用する条件で決定されます。しかし最終的には生型の中に混入し、生型砂の主要な骨材となることから生型で使用しても問題にならないことを確認する必要があります。表1は代表的なけい砂の特性を示しています。

ベントナイト

 ベントナイトは火山噴出物に起源する凝灰岩やガラス質流紋岩が弱アルカリ性環境下において続成作用,熱水本質作用などの地球化学的変質作用を受けて生成した粘土岩です。ベントナイトの主成分はモンモリロナイトと呼ばれる粘土鉱物です。その他に石英,αクリストバライト,オパールなどのけい酸鉱物,長石,雲母,ゼオライトなどのけい酸塩鉱物,カルサイト,ドロマイト,石膏などのアルカリ土類金属,黄鉄鉱などが含まれています。ベントナイトの示す特異な性質はこのモンモリロナイトの性質によるものです。図1に示すようにモンモリロナイトは2枚の四面体シートと1枚の八面体シートからなる3層を基本とした層状構造を形成しおり、その八面体シート内のAl+3が一部Mg+2に置換されています。そのためこの基本となる単位結晶層は負の電荷を帯びており、その負電荷に見合うように陽イオン(Na+,K+,Mg2+,Ca2+など)が層間に存在しています。この層間陽イオンは容易に交換される性質を持っており、かつ水分子を容易に取り込む特性があります。このためモンモリロナイトは無水状態の層間距離が9.6Å(10-10m,0.1nm)という極薄さと相まって、高い陽イオン交換容量および水和による膨潤特性を示します。

図1 モンモリロナイトの結晶構造

図1 モンモリロナイトの結晶構造

 ベントナイトは世界各国で産出しますが、最も産出量が多いのはアメリカで中でも有名なベントナイトは「ボルクレー」,「ブラックヒル」などがあります。国内では群馬県,山形県,青森県などで産出します。
 ベントナイトは一般的に交換性陽イオン組織による方法で次の3種類に分類されています。

  1. Na-ベントナイト

     交換性陽イオンが主としてNa+イオンであり、Na-モンモリロナイトを主成分とした鉱物ベントナイトです。水中における膨潤性,懸濁安定性,増粘性が大きいので、ボーリング泥水,土木基礎工事用泥水,農薬用担体などに用いられます。
     鋳物用生型粘結材としては耐熱性,耐すくわれ性などに優れていることから多くの鋳造工場で使用されていますが、混練を十分に行わないとその特性が発揮されません。

  2. Ca-ベントナイト

     交換性陽イオンが主としてCa+イオンであり、Ca-モンモリロナイトを主成分とした鉱物ベントナイトです。このベントナイトは水中における膨潤性,懸濁安定性などが小さいのでその用途は限られています。
     鋳物用生型粘結材としては耐熱性,耐すくわれ性などには劣るが、湿態強度が高い特徴があります。単独で鋳鉄用に使用されることは少なく、Na-ベントナイトなどとブレンドして使用する場合があります。

  3. Na交換ベントナイト

    Ca-ベントナイトに炭酸ナトリウムを加えてCa=2Naのイオン交換反応を起こさせ、人工的にNa型ベントナイトにしたものです。

    Ca-ベントナイト + Na2CO3 → Na-ベントナイト + CaCO3

     Na交換ベントナイトは天然のNa-ベントナイトに近い特性をもち、生型用粘結材としては湿態強度が大きく耐熱性、耐すくわれ性はCa-ベントナイトより大きく改善されています。また天然のNa-ベントナイトに比べて混練時間が短くてすむという特徴があり、混練時間を長くできない場合および混練機能力が不足している場合などに用いられます。

 今回は、生砂の構成材料の「けい砂」と「ベントナイト」の説明までとして、次回は砂添加剤の「澱粉」、「石炭粉」について説明します。