誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

鋳鉄の材質及び基礎知識

2. 鋳鉄の用途 - 「2-3 今後の展望」
石原技術士事務所 石原安興

 鋳物の用途は自動車が一番多いが、その自動車は「排ガス規制だ、燃費規制だ」と言われて軽くしなければならない。この軽量化は、永遠の課題であろう。鋳鉄は、鉄に比べて軽い黒鉛を含むため、鋼に比べ比重が低いということで(鋼が7.8であるのに対し球状黒鉛鋳鉄は7.2g/ccで8%程度軽い。)、同じ形状で物を作れば鋼に比べて約8%軽くなり、強度も前に述べたように鋼に匹敵するので、鋳鋼や鍛鋼品を球状黒鉛鋳鉄に変えてきた。

 また、最近では建築業界でも、重いものを持つ職人さんはいなくなるし、地震対策等もあり建築用部品も軽くなければということになってきている。そこで、今までねずみ鋳鉄で作られていたマンホールの蓋や建築用部品を強度の強い球状黒鉛鋳鉄に変え、強度の上がった分だけ薄肉軽量化することで質量を50%までいかないまでも大幅な軽量化が実現されてきた。


図1 アルミ鋳物と鋳鉄の価格の比較

 軽いということになるとアルミニウム合金やマグネシウム合金鋳物があるが、価格が高いとか、強度不足であるとかで簡単には転換されてきていない。
  図1に米国の鋳鉄の鋳物屋さんが鋳物のユーザーにアピールしているデータを示すが、質量当たりと強度当たりの価格のいずれも鉄の方が有利だとしている。

フライパン

図2 1.5mmの鋳鉄フライパン
(提供:錦見鋳造)

 但し鋳鉄の鋳物屋さんも薄肉にするとか、抜き勾配を少なくするとか軽量化に努めないと、今までのままではアルミ合金や鍛造品に替わっていくものも多くなる。(鍛造の生産技術改善も目覚しく、型に対し横の穴は抜けないとか、抜き勾配が大きななければ抜けないとか言っていたのは昔の話。)

 薄肉といえば最近インターネット販売で注文がさばけないという、IHクッキングヒーター用1.5mm厚のフライパンがある.肌はきれいで、組織もきちんとした球状黒鉛鋳鉄だしすばらしい。価格競 争では、プレス品に敵わないが、使った人の話によると焦げ付かないなどの優れた点があるとのこと。新しい挑戦である。

 今までと同じ工法、同じ品物を作っていては、最近急成長の中国の低コストの鋳物には勝てない。新しい品物を今まで培ってきた日本の技術と技能に加えCAD、CAMその他のIT技術を駆使して鋳物を作れば大発展はないとしても、まだまだ鋳物の生産は続くと考える。しかし、鋳造工場、鋳造業従事者が毎年減ってきていることは、日本の鋳物技術・技能の伝承が心配となる。国も、この点を心配し人材育成プロジェクト等で頑張れる鋳物屋さんつくりを開始した。関東でも関東支部と川口地区の鋳物屋さんが共同でシステムつくりを開始した。会員諸氏の協力をお願いしたい。