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ダイカストの基礎(その3)
1 ダイカストの概要
1.3 ダイカストの歴史
1.3.2 日本のダイカストの歴史(後編)
図1-1 日本における1950年以降のダイカストの生産推移 |
1950年以降の日本のダイカストの生産量の推移を図1-2に示す。1950年のダイカストの総生産量は1,224tであった。その後、総生産量は1960年台半ば以降に自動車産業の発展に伴って増加した。
1950年のダイカストの生産量は1,224tであったが、1955年以降日本経済は急激に成長を遂げ、いわゆる高度成長時代を迎えた。これに伴い消費財、生産財ともに多量生産が定着しダイカスト製品の需要増加を支えた。モータリゼーションの進展で自動車の生産台数が増加するに従って、クランクケース、エンジンブロック、ミッションケースなどの自動車関連部品が増加した。
1971年の変動相場制への移行、いわゆる“ニクソンショック”以降日本の国内産業界の不況は1973年の第一次石油ショックの追い打ちを受けて、一段と深刻になった。しかし、日本の自動車産業は低燃費の中小型車の生産を得意としていたことと、高品質と新設備の量産効果による低価格を実現していたため海外からの需要は好調であった。すでに自動車生産にとって不可欠となったダイカストの生産も回復した。1980年にイラン、イラク間の紛争が起り、第二次石油ショックとなり再び景気の停滞期を迎えた。その後、再び輸出需要が好調で自動車生産台数が増加し、それに伴いダイカストの生産も増加し続けた。さらに1990年代初頭には、バブル崩壊で経済停滞期を迎えることとなった。このようにたび重なる不況の波を受けながらも、ダイカストは自動車関連、電機関連を中心に生産品種・量ともに増加した。特に2002年以降の生産量は、著しい伸びを示し、自動車の輸出が大変好調なことに牽引されたものであった。しかし、2007年のアメリカの住宅バブル崩壊に端を発した「100年に一度」といわれる世界的な金融危機に発展し、世界経済が急速な縮小を余儀なくされた。しかし、2010年は次に述べるような理由で急速に回復することとなった。
1.4 ダイカストの現況 1)
2010年のダイカスト生産量は、981,099tで過去最高の生産量を記録した2007年の1,158,018tに比べて約17.7万t少ないが、米国のサブプライム問題から派生した世界的な不況の影響が現れた2009年の758,316tに比べて約22万t増加して急激な回復となった。これは、自動車、家電などの購入に対する政府の補助金の支給による需要増や、中国を始めとする海外の急激な回復による生産増が影響したものと考えられる。 図1-2に2010年の合金別ダイカストの生産割合を示す。96.7%がアルミニウム合金で、亜鉛合金は2.8%、マグネシウム合金及び銅合金などのその他の合金が0.5%とダイカストのほとんどがアルミニウム合金で占められている。ここ数年亜鉛合金及びマグネシウム合金の生産量はわずかながら減少している。軽量化効果及びコスト効果を勘案するとこの傾向はしばらく続くものと予想される。 図1-3に2008年のアルミニウム合金ダイカストと亜鉛合金ダイカストの用途別構成比率を示す。アルミニウム合金では自動車用が84.6%で、ほとんどをしめる。また、亜鉛合金ダイカストでは自動車用が62.3%でアルミニウム合金に比較してその占有率が低い。 |
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図1-2 2010年の合金別ダイカストの生産割合 |
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アルミニウム合金ダイカスト | 亜鉛合金ダイカスト |
図1-3 ダイカストの用途別生産割合 |
参考文献
1) 経済産業省 鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計