誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

溶解

3.キュポラ溶解の実際 「3-1 甑とキュポラ」
川口鋳物工業協同組合 山中 昇

 

図1 キュポラの構造概要、注1)

 燃えているものに、息を吹きかけたり、うちわで扇いだりすると、火は激しく燃えさかる。よりよい環境ならばもっと燃えるわけである。わが国には古来より使われていた蒸籠(せいろ)とよく似た甑(こしき)があった。西欧から導入され、樽をもとにしたものがキュポラである。ともに円筒状の鋼板に耐火レンガを内張して、燃料と地金を入れ、風を送って地金を溶解していた。甑は、鍋釜などの日用品の鋳物づくりに向いていたが、背が高く高温溶解でき、材質管理に向いているキュポラに駆逐され、現在ではあまり見受けない。
  キュポラの送風は羽根車の回転で空気を圧送する遠心型(ターボ型)送風機で行い、起きた風は風管を通り風箱に入る。ここで風の方向性が調整され、送風口の羽口より炉内に送り込まれる。炉内ではコークスを均等に燃焼させ、地金の溶解の不均一を防ぐことになる。図1はキュポラの構造概要で、羽口から送り込まれた風は溶解部を通過し炉頂から集塵記を経由して排気される。溶解に最も重要な部分は、コークスを燃焼させ地金を溶解させる羽口面から装入口下面部の範囲(H:有効高さ)である。

図2 炉高の区分名称、注2)

 図2は炉高(溶解部)の区分で、ベットコークスの上に追込めコークスと地金類が層状に積込まれ、地金は溶解帯附近で溶け落ち、溶滴は羽口上面部分の過熱帯で充分な熱をもらいながら滴下して湯溜まり部に溜まる。コークスは送風量の多少によって早く燃えすぎたり、燃えが悪かったりして高温の溶湯が得られないこともある。送風量は炉の大きさによって異なるが、コークス量と送風量の調整をより適切に行うことで、ベットコースの高さも安定し、高温の溶湯が連続的に得られる。一般に送風量は100~110m3/min・m2の範囲で炉内の風圧に左右される風量は風量制御装置により一定の風圧に管理される。

注1)鋳鉄の生産技術、(財)素形材センター;P130、注2)鋳鉄の生産技術、(財)素形材センター;P131