誰でも分かる技術
溶解
4.電気炉溶解の実際 「4-1 誘導炉ってなに?電気でなぜ溶ける?」
金属を溶かすために熱を加える。溶解編の前段では、主にコークスを用いて熱を得る「キュポラ」について述べられたが、本編はエネルギー源として電力を使う方法について考える。
電力は光・運動・熱・その他のエネルギーに容易に変換でき、その扱い易さから家庭や産業用に広く利用されており、金属を溶かす鋳物の工場でも同様である。電力を使って熱を得る方法はいろいろあるが、みなさんが家庭で経験している最も身近な例としては、電気ヒーターやクッキングコンロで、抵抗体に電流を流して加熱しその熱を間接的に被加熱物に伝えるものである。
図1 電気炉の分類
金属、特に鋳鉄を溶かすためには、もっと多くの熱量を与えて被加熱体を1,200℃以上の高い温度に上げる必要がある。そのためには間接加熱では不十分で、金属に直接電気を流して金属自体を発熱させる方法や、電磁誘導を活用して被加熱金属内に電流を発生させる誘導炉が使われており、最近は後者の例が圧倒的に多い。
誘導炉とはなにか? 電気でなぜ溶ける?
図2 るつぼ型誘導炉の構造
図3 電磁誘導と発熱の原理
工業用の誘導炉はこれをより大型かつ強固にしたもので、炉の形状から見てわかるように、溶けた金属は直接コイルや炉体と接触してないので、理論上は耐火物が耐えられる限り温度を上げることが出来る。従って、高融点金属の溶解にも多く使われる。また、酸素が不要で燃焼ガスを出さないので真空中の溶解にも使える優れものである。
さて、もう一度図1を見よう。誘導炉に低周波、中間周波、高周波の種類がある。
るつぼ型誘導炉でもコイルに流す電流の周波数によって電気・電磁特性が異なる。最近このタイプの炉でよく使われだしたのが、中間周波炉(300~500Hz)であるが、大電力を投入でき、溶解速度の速い中間周波の誘導炉が、多品種対応や効率の点から好まれているためである。
次回は、「誘導炉溶湯の特徴」について述べる。