誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

現場におけるQC的問題解決の進め方(第1回)

公益社団法人日本鋳造工学会
佐藤 万企夫
1 はじめに

 これから1年間「現場におけるQC的問題解決の進め方」というテーマで解説をする。

 鋳物屋は鋳造技術については良く学び経験しているので、現場で問題が起きるとその内容を見て、今までの経験と知識で問題解決は図ろうとすることが多い。しかし時としてそれでは解決できず、一向に良くならない、あるいは一旦改善しても再発したりすることがある。

 物の見方に「虫(蟻)の目」「鳥の目」「魚の目」が有るということをご存知だと思うが、
私たちは不具合が発生した際に、往々にして「虫の目」で見て判断し、動くことが多いと思う。しかし応急措置をとったら次に「鳥の目」や「魚の目」で、改めて起きている事実を見直すことが大切である。このときにQC的な問題解決の進め方が必要になる。

 樹を見て森を見ず、という言葉があるが、不良や故障の現象を見て対策を考える(=虫の目で判断する)と、上から見えない細かいところまで近づいてしっかり見られるので起きている事実は正しくとらえることができるものの、全体の把握すなわち取巻く環境の変化や、流れの把握が疎かになりがちである。

 「鳥の目」で見るということは、例えば使用材料に変化はなかったのか、作業者に変化は? 使用している型の変化は? 設備の動きは同じだったか?等々の見方が考えられる。即ち高いところから「俯瞰的に全体を見回してみる」ことである。次に「魚の目」で見るということは、目にはよく見えない潮の流れや川の流れをしっかり見るということで、変化を的確に読むことである。具体的に現場では、生産要求数に変化がありタクトタイムが変わったとか、その結果鋳枠内冷却時間や工程内滞留時間に変化があったとかという問題が考えられる。 私たちが現場で起きることを考えるにあたり、このようないろいろの角度からの見方が求められると思う。

 そこで本講座ではQC的な問題解決を進めるにあたり、身に着けておくべき3つの内容について、回を分けて解説していく。3つの内容とは下記である。

  1. QC的なものの見方・考え方
  2. 問題解決の手順(QC的問題解決法)
  3. 統計的考え方、統計的手法(QC手法―QC7つ道具)