誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

現場におけるQC的問題解決の進め方(第2回)

公益社団法人日本鋳造工学会
佐藤 万企夫
2 鋳造現場におけるQC的考え方の必要性

2-1 品質管理の進め方

 品質管理の目的は、顧客に喜んでいただける商品やサービスを、より安く、タイムリーに提供できるよう、‘全ての仕事の質の改善’を進めることである。品質管理を効果的に実施するためには、組織の全部門、即ち市場調査、研究開発、製品企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、輸送、販売、保全やアフタサービス並びにこれらの活動を支援する総務、人事、教育、財務等企業活動の全段階において、経営者から現場で働くオペレータまで全員の参加と協力が必要である。これらの活動を進める基本がTQM(Total Quality Management : 総合的品質管理)と呼ばれる。

 品質管理を進めるにあたり、ISO9000シリーズによる品質システムの構築と、構築されたシステムを上記TQMの実践により具現化することで達成できる。実際にどのようにしてTQM活動を進めるのかについて、その一部であるQC的なものの見方・考え方から、QCストーリー、QC手法というような、日常的な改善活動に重点を絞り、解説する。

2-2 鋳造工程の特徴

 鋳造の現場では、毎日のように不良や欠陥で悩まされているのではないだろうか。一般的に私たちは現場の不良に対し、鋳造技術という専門技術を駆使して解決しようとする。もちろん専門技術は最も大切で、これ無くして問題の解決は図れない。しかし現場は刻一刻と変化している。専門技術に加えてもう一つ重要なものは「管理技術(含 統計的手法)」であり、「専門技術」と「管理技術」は現場で仕事をする上では車の両輪となっている。  

 鋳造工程は数多くのばらつきの要因の中で工程が設計されているといえる。例えば溶解工程では、材料の種類、大きさ、材料の計量、合金鉄等の添加、またその時期、キュポラの場合はこれらに加えて材料やコークスの形状や大きさ、送風の風圧や風量、結果としての溶湯の温度や成分がある。また場合によっては同じ成分や温度になっていても、その溶解プロセスの差、溶湯処理方法の差等により結果は異なってくる。砂型造型の場合、砂の性状、温度、金型、造型機、注湯機そしてそれらを操作するオペレータと、無限大と言ってもよいほどの変動要因の中で製造するという特徴がある。従って次のような現象に出くわすことがあるのではないかと思う。

 例えば溶湯成分が規格から外れていても、砂の水分が目標値から外れていても、その他管理値として設定した製造条件から外れていても、不良になるとは限らない。一方全ての条件が管理規格内に入っていても不良品になってしまうことがよくあるのではないだろうか。

 なぜこのようになるのだろうか?私自身の今までの経験から大きく2つのキーワードで表されるのではないかと思う。

  1. 製造工程内で管理する項目に交互作用が存在する。
  2. 製造条件は経験からくるもので、絶対的(普遍的)なものではない。

 このような世界での仕事は、専門技術だけでは解決できない問題が多く、現場で起きる様々な事象をデータで捉え、これらのデータを、例えば統計的に眺めることで何か問題点が見えてくるということが多くある。このようなものの見方をするためには「管理技術」が必要になる。